厚生年金の受給額を完全解説:平均・計算方法・年収別の目安と対策
2026.09.04 (金)
厚生年金の受給額は、現役時代の年収(標準報酬)や加入期間、受給開始年齢によって大きく変わります。平均額だけを見ても、自分の見込み額とはズレることがあるため注意が必要です。
この記事では、厚生年金の平均受給額の見方から、受給額の計算方法(老齢厚生年金)、年収・加入期間別のイメージ、さらに受給額を増やす具体策までをまとめて解説します。最後に、年金だけで不足する場合の備え方も整理します。
厚生年金の基本:国民年金との違いと受給開始年齢
まずは公的年金の全体像と、厚生年金がどの層に関係し、いつから受け取れる制度なのかを押さえると、受給額の理解がスムーズになります。
厚生年金の受給額を考えるときは、厚生年金だけでなく国民年金とセットで理解することが重要です。多くの人が老後に受け取るのは、国民年金部分と厚生年金部分の合計であり、どちらか片方だけの金額を見て判断するとズレが生まれます。
また、受給開始年齢の選び方は、金額の大小だけでなく老後の資金繰りに直結します。早く受け取れば毎月は減り、遅らせれば毎月は増えますが、どちらが得かは寿命だけでなく、働く予定や貯蓄、税金や社会保険料の負担まで含めて考える必要があります。
以下で、制度の構造と受給開始の基本を短く整理します。
公的年金は「国民年金」と「厚生年金」
公的年金は「1階=国民年金」「2階=厚生年金」の構造で、国民年金は20〜60歳の全国民が加入します。加入者は第1号(自営業・学生等)、第2号(会社員・公務員)、第3号(第2号の扶養配偶者)に分かれ、第1号は定額保険料、第2号は給与に応じて労使で負担します。
受給は、全員が老齢基礎年金を受け取り、会社員等の期間がある人は老齢厚生年金が上乗せされます。厚生年金は報酬と加入期間が反映される“上乗せ部分”です。
受給開始は原則65歳で、資格期間は10年以上です。繰上げは60歳から可能で減額、繰下げは75歳まで可能で増額できます。
厚生年金の平均受給額
平均受給額は目安として有用ですが、定義や集計の前提を理解しないと誤解しがちです。統計の読み方と代表的な切り口を紹介します。
厚生年金の平均受給額は、相場観を持つのに役立ちます。ただし平均は、加入期間が長い人や報酬が高かった人の影響を強く受けるため、あなたの受給額と一致するとは限りません。中央値ではない点にも注意が必要です。
また「厚生年金の受給額」と言いながら、実際には老齢基礎年金を含む合計額として説明されている情報もあります。統計や記事を見るときは、厚生年金部分のみなのか、基礎年金と合算なのかを必ず確認しましょう。
ここでは、平均月額の目安と、男女別の推移の見方を整理します。
厚生年金の平均月額の目安
出展:厚生年金保険・国民年金事業の概況|厚生労働省(外部サイトに移動します)
厚生労働省が発表したデータによると2024年度の平均受給月額は151,142円でした。2015年度の平均受給月額は147,872円に比べると約2%増加しています。
ただし、この金額は全員が同じだけ受け取れるという意味ではありません。報酬水準や加入期間、繰上げ・繰下げの有無、加給年金の有無などで大きく変わります。
男女別の平均受給額
出展:厚生年金保険・国民年金事業の概況|厚生労働省(外部サイトに移動します)
男女別の平均受給額には差が出やすい傾向があります。これは制度が性別で異なるからではなく、過去の就業構造や賃金水準、勤務形態の違いが年金額に反映されるためです。
特に厚生年金は報酬比例なので、同じ加入期間でも標準報酬が違えば受給額は変わります。また、出産・育児による離職や短時間勤務があると加入期間や平均報酬に影響します。
厚生年金の受給額イメージ
受給額の差を生む最大要因は「標準報酬」と「加入期間」です。代表的なケースを使って、増減のロジックを具体化します。
厚生年金の受給額は、ざっくり言うと現役時代の平均的な報酬が高く、加入期間が長いほど増えます。逆に、非正規期間が長い、厚生年金に入っていない期間がある、報酬が低い期間が長いほど、上乗せ部分は小さくなります。
よくある誤解は、年収だけで将来の年金額が決まると思ってしまうことです。実際は、どのくらいの期間、どの制度で保険料を納めたかが同じくらい重要で、短期間だけ年収が高くても平均が押し上がりにくい場合があります。
ここでは、年収と加入期間それぞれがどう効くのかを、制度のロジックから説明します。
受給額が変わる仕組み
年収(標準報酬)
厚生年金は手取りではなく標準報酬月額と標準賞与額を基礎に計算され、給与や賞与が上がれば将来の年金も増えやすくなります。ただし標準報酬には上限があるため、高収入でも無限に増えるわけではありません。実務では「標準報酬がどの等級で推移しているか」が重要で、ねんきん定期便を見ると増減の理由が分かります。
加入期間
受給額は加入期間の長さでも大きく変わります。同じ報酬でも加入月数が長いほど上乗せが増えます。転職しても厚生年金に加入していれば期間は通算されますが、適用外の期間は積み上がりません。年収アップより「厚生年金に長く加入し続ける働き方」のほうが受給額に効くことも多く、働き方の選択が老後の年金に与える影響は大きいです。
厚生年金の受給額の計算方法
平均やシミュレーションだけでなく、自分の条件で計算の仕組みを理解すると、将来の見込み額や増やし方の検討がしやすくなります。ネット上の簡易試算は前提を単純化しているため、実際の支給額と違う場合があることに注意が必要です。
老齢厚生年金の中心は報酬比例部分で、平均標準報酬と加入月数に応じて概算できます。感覚としては、標準報酬が高い期間が長いほど積み上がる仕組みです。
実務では、加入時期によって計算に使う係数が異なる区分があり、2003年3月以前と2003年4月以後で分けて計算されます。そのため、単純に今の年収だけで推し量るのは危険です。さらに、条件によっては加給年金や経過的加算など上乗せがつく場合があります。一方で要件が細かく、家族の年齢や扶養関係、加入期間などの確認が必要なので、厳密な金額は公式記録で確認するのが確実です。
受給額の確認で最も確実なのは、ねんきん定期便とねんきんネットです。ねんきん定期便では、加入実績、標準報酬の情報、将来の見込み額などがまとめて確認できます。
詳しくはこちらの記事をご覧ください。ねんきん定期便の見方を徹底解説!年金受給額を正しく把握して老後を安心に|ゼロから学べるアイザワ投資大学
【早見表】年収別・加入別の受給額
年収や加入状況によって、受給額がどのように変わるのかを一覧で確認してみましょう。
上記の早見表は厚生年金の報酬比例部分のみのため、経過的加算額や加給年金額が加わる場合があります。また、年金受取時は厚生年金に加えて国民年金も受給できます。
受給額を増やす方法
厚生年金は「受け取り開始の選び方」と「加入・納付の積み上げ」で増やせます。制度上の代表的な増やし方を具体策として整理します。
年金を増やす方法は、短期の裏技ではなく、制度のルールに沿って増やすのが基本です。大きくは、受給開始を遅らせて増額するか、現役期に厚生年金の加入期間や標準報酬を積み上げるか、基礎年金を減らさないよう未納をなくすか、の3方向です。
ただし増やすことだけを目的にすると、老後の資金繰りが苦しくなることがあります。たとえば繰下げで増額しても、開始までの生活費を貯蓄で賄えないなら本末転倒です。
自分の働き方と家計に合う手段を選べるように、代表策と注意点を整理します。
繰下げ受給を活用する
繰下げ受給は、受け取り開始を遅らせることで年金額が増える制度です。増額は遅らせた月数に応じて反映され、増えた金額は生涯続きます。
ただし、損益分岐は寿命だけでは決まりません。繰下げ期間中に取り崩す貯蓄の有無、働いている間の収入、年金が増えた結果としての税金や社会保険料の負担増まで含めて考える必要があります。
また、一度受給を開始すると原則として後から繰下げに切り替えることはできません。判断前に、家計の見通しを年単位ではなく月単位で作り、資金ショートしないか確認するのが安全です。
厚生年金の加入期間を伸ばす(働き方・適用拡大)
厚生年金は加入期間が長いほど報酬比例部分が積み上がるため、働く期間を延ばすことは受給額アップに直結しやすいです。定年後の継続雇用や再就職でも、要件を満たして厚生年金に加入すれば、将来の年金に反映されます。
近年は短時間労働者への適用拡大が進み、以前なら国民年金のみだった働き方でも厚生年金に入れるケースが増えています。勤務時間や賃金、企業規模などの要件に該当するかを確認することが大切です。
実務のコツは、厚生年金に入れるかどうかを手取りだけで判断しないことです。社会保険料の負担は増えても、将来の年金や保障が厚くなるため、長期の家計で損得を見直す価値があります。
国民年金の未納を防ぐ・追納する(該当者)
厚生年金に加入していた人でも、学生時代や転職の空白などで国民年金に未納期間があると、老齢基礎年金が減ってしまい、結果として合計の受給額が下がります。まずは未納を作らないことが最優先です。
免除や猶予を受けていた期間がある場合、一定の期限内なら追納できることがあります。追納すると将来の年金額を回復でき、支払った保険料は社会保険料控除の対象になるため、税負担の面でもメリットが出ることがあります。
追納には期限や加算額があり、家計状況によって最適解が変わります。ねんきんネット等で期間を特定し、追納の効果を金額で見える化してから判断すると失敗しにくいです。
老後資金に備える選択肢
年金だけで不足する場合に備え、私的年金や資産形成制度を組み合わせるのが現実的です。代表的な選択肢を特徴別に比較します。
公的年金は老後の土台ですが、生活費や希望する暮らしによっては不足が出ることがあります。その場合は、企業年金やiDeCo、NISAなどを組み合わせ、老後のキャッシュフローを補強するのが現実的です。
・企業年金
会社員の老後収入を上乗せする制度で、DBや企業型DCがあります。転職時の移換手続きや受取方法の確認が必須で、放置すると不利になることもあります。まず勤務先の制度を把握し、ねんきん定期便と合わせて老後収入を整理します。
・iDeCo
掛金が所得控除、運用益非課税、受取時も優遇と税メリットが大きい私的年金です。60歳まで引き出せないため、生活防衛資金が薄い人は注意が必要となります。長期で無理なく続けられる掛金と低コスト商品での分散が基本です。
・NISA・個人年金保険など
NISAは非課税で流動性が高く、老後以外の目的にも使いやすいというメリットがあります。また、個人年金保険は受取設計が分かりやすい一方、手数料やインフレ耐性がデメリットとなります。
使い分けの考え方としては、税制優遇と老後専用で積み立てるならiDeCo、流動性も確保しながら資産形成するならNISA、受取方法の分かりやすさや一定の保障を重視するなら保険、と目的で選ぶのが失敗しにくいです。
老後に必要な生活費と不足額を見積もる
老後設計で重要なのは、年金額そのものではなく生活費との差=毎月の不足額を把握することです。まず固定費と変動費を分けて自分の生活費を月額で見積もり、年金の見込み額との差を計算します。
不足が出る場合は、貯蓄の取り崩し、就労収入、私的年金や運用などでどう補うかを決めます。
詳しくは以下の記事で解説しています。
老後資金シミュレーションで豊かなセカンドライフを実現する方法|ゼロから学べるアイザワ投資大学
まとめ:平均と計算方法を押さえて受給額を見える化しよう
平均額で相場観を持ちつつ、計算の仕組みと確認方法で自分の見込み額を具体化し、必要なら増やし方・私的な備えまで一体で設計することが重要です。
厚生年金の受給額は、平均だけでは判断できず、標準報酬と加入期間、受給開始年齢の組み合わせで大きく変わります。まずは平均で相場観を持ちつつ、数字の前提を理解して読み違いを防ぐことが大切です。計算の骨格は、老齢基礎年金は加入月数の按分、老齢厚生年金は報酬と加入月数の積み上げです。ねんきん定期便やねんきんネットで記録と見込み額を確認するのが最短ルートになります。
不足が見えたら、繰下げや加入期間の延長、未納の解消で公的年金を整えたうえで、企業年金やiDeCo、NISAなどを組み合わせてギャップを埋める設計に進みましょう。見える化ができれば、老後不安は具体的な行動計画に変えられます。
ご留意事項
免責事項
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