
中国株トピックス 中国本土株は約10 年ぶりの高値を回復
2025.09.11 (木)




中国本土株は約10 年ぶりの高値を回復
世界株高が続く中、中国本土市場も7月から上げ足を速め、上海総合指数や中国本土市場全銘柄指数など主要指数は10年ぶりの高値を回復した。また、中国本土市場の日々売買代金は連日で2兆元(約41兆円)の大台を超え2015年を上回る水準となっているほか、信用残高も過去最高に迫る勢いだ。

中国本土株が急騰した背景は、まず、米中関係は年初の激しい関税合戦を経て小康状態に入り、中国の輸出も当初の市場予想を遥かに上回る堅調さを見せ、GDP成⾧目標(5%前後)の実現が視野に入った。次に、中国政府は昨年9月から緊縮財政を終結させたほか、金融政策も14年間続いた「穏健的」から「適度緩和」へ転換し、今年に入ってからリフレが実現するまで金融緩和を続けるメッセージをマーケットに送った。産業政策についても、2016~2017年の供給サイド改革(過剰生産能力の削減)を成功体験に、無秩序な企業競争に終止符を打つ「反内巻」改革を打ち出し、世紀的なビッグプロジェクトともいわれるヤルンツァンポ川水力事業を着工させたことが市場心理の改善につながったと思われる。
第三に、中国では新型コロナ禍を経て、貯蓄志向の強まりにより30兆元(約618兆円)を超える過剰貯蓄が積みあがった。現状、銀行定期預金金利(1年物は1%程度)や1年国債利回りは、主要株価指数の配当利回りを大きく下回っている。ここにきて中国のマネーサプライM1(非定期預金)が大幅伸⾧を記録し、株式口座の新規開設数が急増するなど、中国家計の投資動向に変化の兆しが見られつつある。

第4に、8月末の点で中国本土市場のETF(上場投資信託)の純資産は5兆元(約103兆円)の大台を超え、アジア随一のETF市場に成⾧している(右下図参照)。中国本土市場は⾧らく個人投資家が主導する投機市場と言われてきたが、近年パッシブ投資は幅広く浸透し、重要な投資手段として定着しつつある。最後、先進国市場に続いて新興国市場も軒並み強気相場に突入するなか、中国本土・香港市場に相対的な出遅れ感が強まっている。例えば、代表的なCSI300指数と香港ハンセン中国企業指数のPERは10倍台前半と主要国市場に比べ割安感が目立っている。現在の株式市場を取り巻く環境は、成⾧鈍化やデフレ、債務問題に苦しむ1997~1998年のアジア金融危機後の中国経済の状況に類似し、株高は資産効果と債務軽減を通じてデフレマインドを払拭させる重要な役割を果たすと思われる。今後、相場の行方を占うには、「反内巻」政策がどれだけ需給改善とデフレ退治に効果を発揮するか、または過剰貯蓄の株式流入が続くかどうかは鍵を握りそうだ。
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