亜州潮流 ベトナム、QRコード決済の急成長
2025.12.15 (月)
当記事は毎月、アイザワ証券投資情報サイトに掲載しているアイザワ・グローバルマンスリーより抜粋しております。
ベトナム、QRコード決済の急成長
近年、アジア新興国ではモバイル決済やデジタルバンキングの急速な普及により、キャッシュレス社会への移行が加速している。特にベトナムでは、QR コード決済が急速に浸透している。ベトナムでは、店側に提示されたQR コードをユーザー自身が読み込み、支払い金額を入力して支払うスキャン&ペイ方式が主流となっている。QR コードはレストランやカフェ、タクシーなど至る所に掲示してあり、筆者も日常的にQR コード決済を使用している。
ベトナムでは、銀行口座を開設することができれば、QR コード決済を利用できる。デビットカードと同様の感覚で、決済後は銀行口座から支払代金がすぐに引き落とされる。利用者側は、特に手数料は掛からない。レストランなどで友人と割り勘する際も、相手のQR コードを読み取って金額を入力すれば送金が即座に完了する。日本のPayPay などにも似ているが、相手が特定の決済アプリを使用していなくても銀行口座さえあれば送金できる点で手軽さがある。ただし、金額が大きい場合は、金額を入力する際にゼロの数を間違えていないか注意が必要だ。
決済サービスの提供者をみると、銀行がアプリ上でQR コードによる送金・決済サービスを提供しているだけでなく、銀行以外の企業もキャッシュレス決済アプリを提供している。代表的なキャッシュレス決済アプリは、国内市場でNo.1 のシェアを誇る「MoMo」(未上場)と人気メッセージアプリZalo を背景に持つ「ZaloPay」である(親会社のVNZ はUPCoM 上場、※当社取扱外)
ベトナム中央銀行(SBV)の年次報告書によると、2023 年のQR コードを利用した決済件数は2億6,287 万件で、取引額は191 兆9,300 億ドンであった。これは、前年と比較して件数が242.46%増加し、取引額が157.2%増加したことを示している。特に2021 年にSBV 傘下のベトナム国家決済会社(NAPAS)がQR コードの共通規格「VietQR」とそれに基づく送金サービスの発表以降、利便性が高まり普及が加速した。NAPAS は現在、タイ、カンボジア、ラオスとの間で越境QR コード決済サービスも提供している。今後はこれらの国以外にもサービス提供地域を拡大する方針だ。つい先日、筆者が同サービスをタイで利用してみたところ、残念ながら一時的に利用できない状況であった。複数の国との間でQR コード決済が相互利用可能になることで、ベトナムと周辺国を往来する出張者や旅行者などが現地通貨への換金という煩わしさから解放され、結果として域内の消費拡大を後押しすることが期待される。
ほかにも、ベトナム政府は毎年6 月16 日を「キャッシュレスデー」と定め、消費者にキャッシュレス決済の利用を促進するキャンペーンを実施するなど、キャッシュレス決済のさらなる発展に取り組んでおり、今後のキャッシュレス化の進展に注目したい。
※「QRコード」は株式会社デンソーウェーブの登録商標です。
「亜州潮流」は、アジア新興国のトレンドを解説したコラムです。投資の推奨を目的としたものではありません。
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