
亜州潮流 中国のグッズ経済と「ラブブ」の人気
2025.10.14 (火)




当記事は毎月、アイザワ証券投資情報サイトに掲載しているアイザワ・グローバルマンスリーより抜粋しております。
中国のグッズ経済と「ラブブ」の人気
この夏、「ラブブ( Labubu)がゲットできた?」という挨拶の言葉は中国若者の間で流行っているようだ。ラブブが今、世界を席巻している。ラブブの販売元である香港上場企業のポップマート(香港:9992、以下同社)の株価は1年前のほぼ7 倍に急騰し、9月には香港市場の代表的な株価指数「ハンセン指数」にも採用された。その時価総額が一時的に4,500億香港ドル(8.5兆円)を超え、海外売上高比率が今年1~6月に40%に達したことで同社は一躍世界屈指のキャラクターIP(知的財産)企業となった。

【写真】上海のポップマートのグッズ販売店 筆者撮影
同社は中国・北京で玩具メーカーとして2008年に創業し、2015年からブラインドボックス・フィギュア(中身がランダムのフィギュア)の販売が拡大した。北京五輪・上海万博以後の中国では、産業の高度化に伴って若者の間で「国潮ブーム」(中国発のトレンド)が沸き起こっており、消費者向け電子製品やアパレルのみならず、ソフトウェアや創薬、ゲーム、アニメ・映画、IP など知財や文化の分野でも多くの企業が頭角を現した。
近年、中国では「グッズ経済」(IP の周辺商品、中国語は谷子経済)という言葉が広く認知されるようになった。それを牽引するのは、中国のZ 世代及びミレニアル世代である。それらの世代は生活水準の向上に伴って豊かに育ち、物欲より自身の内面や感情、モノの機能性より精神的な「共感性」や「物語性」などを重視する傾向がある。彼らにとって、モノ・サービスに対して「共感」や「感情の投影」、「自分らしい世界観」、「自己表現」などの価値を見出せるかどうかが重要だ。ラブブの人気は、同社がマーケティング戦略でそのトレンドとSNS 文化(若者に人気なアプリであるティックトックやレッドブック)を巧みに取り込んだと同時に、消費者の収集欲や投稿欲、射幸心なども刺激したといえる。アジアを中心にZ 世代及びミレニアル世代は同様な傾向があるため、中国での成功を海外でも複製したと言っても過言ではない。
国内の調査機関によると、中国の「グッズ経済」の規模は2024年に1689億元と2020年のおよそ3倍に拡大し、2029年には3000億元を突破する見通しだ。グッズ経済圏では1級・2級都市(大都市と省都)での消費が全体の8割、消費の主役となりつつあるZ世代が5割を超えているのが現状だが、地方都市やほかの年齢層にも拡散している。ただ、ラブブ人気の背後には転売を目的とした投機的な動きがあるほか、偽物や模倣品が大量に出回るとブランド価値を毀損する可能性もある。また、IPと感情的価値によるビジネスモデルは⾧期にわたって成り立つかどうかも今後試されそうだ。⾧い目で見ると中国が製造大国から創造大国へとシフトしていく中で、ラブブの海外人気は中国発のキャラクター・IPが世界的に認められる証左でもあり、今後グローバルな文化潮流の一翼を担う存在になることに期待したい。
「亜州潮流」は、アジア新興国のトレンドを解説したコラムです。投資の推奨を目的としたものではありません。
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