
亜州潮流 上海にルイ・ヴィトンの旗艦店がオープン
2025.08.18 (月)




上海にルイ・ヴィトンの旗艦店がオープン
上海随一のブランド街である南京西路に、巨大なクルーズ船が突如出現した。それは、仏高級ブランド「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」が6月末に新規オープンした「ザ・ルイ(The Louis)」と呼ばれる実物大のクルーズ船形のコンセプト旗艦店である(下写真参照)。同店舗は高さ30メートルの3階建てで、総面積が1600平方メートルを超える。中には、ギフトショップと小売スペースに加え、同ブランドの歴史を紹介する展示やカフェ、ダイニングスペースなども統合された複合的な空間となっている。

[写真]南京西路にある「ザ・ルイ」 筆者撮影
その船型設計は、上海の港湾文化に対するオマージュであると同時に、創業当初から大洋横断トランクを製作してきたブランドのルーツに根ざしたものだと、ルイ・ヴィトンのデザインチームが説明している。あまりにも大胆な店舗の外観デザインとそのスケールに圧倒され、連日大勢の来場者で賑わっているため、隣接するスターバックス上海旗艦店や同店舗が入居した興業太古滙(HKRI TaikooHui)も来客数が激増した。
「ザ・ルイ」が上海に登場したのは、ルイ・ヴィトンが建築や文化、アートとの融合を通じてラグジュアリーを再定義する取り組みの一環であると同時に、上海市政府が都市再開発を視野に積極的な外資ブランド誘致を進めてきたことも大きな要因として報道されている。ザ・ルイが立地する場所は、大規模な再開発が進められる100 年以上の歴史を持つ「張園」エリアであり、伝統と革新を全て受け入れることこそが上海の精神でもある。上海市では、世界的なブランドがひしめく南京西路エリアの年商が1000 億元(約2兆円)を目指すという目標が掲げられており、それを達成するには商業環境の整備やサービスの質的な向上、ブランド店の誘致も欠かせない。
国内機関の調査によると、2024 年の中国の奢侈品消費額は前年比17%減少した。グローバルブランドにとって中国市場はかつてドル箱的な存在となっていたが、近年販売戦略の見直しを迫られている。不動産不況を背景に中国消費者のマインドが低迷するだけでなく、海外ブランドに対するZ世代の認知度低下など構造問題も浮上。ルイ・ヴィトン会⾧兼CEOが「ザ・ルイ」は、ルイ・ヴィトンの文化的な旅への更なる一歩となると語ったように、ルイ・ヴィトンは中国奢侈品市場のトップランナーとして販売戦略を転換する新たなアプローチと挑戦を始めたと言って良い。「ザ・ヴルイ」は上海のブランド市場に新風を巻き起こしているが、回復しつつある上海及び中国の個人消費を活気付けることも期待したい。
「亜州潮流」は、アジア新興国のトレンドを解説したコラムです。投資の推奨を目的としたものではありません。
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