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亜州潮流 ベトナムにおける小規模事業者の休業

2025.07.22 (火)

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亜州潮流 ベトナムにおける小規模事業者の休業

ベトナムにおける小規模事業者の休業

最近、ベトナムの多くの地域で、小規模事業者が突然営業を停止する状況が見られた。特に大都市の老舗市場や卸売市場では、人影がまばらになっている。ホーチミン市税務局によると、5月だけで市内3,763の事業所が営業停止または閉鎖した。この現象には主に2つの原因が考えられる。一つ目の原因は、政府の税制改革に関する「政令70」に対する国民の反応である。具体的には、6月1日以降、年間売上が10億ドン(約550万円)以上の個人事業主は、税務当局に接続されたレジからの電子インボイスの使用が義務付けられた。また、これまでの固定税額方式に代わり、実際の売上に基づいた課税方式が導入された。固定税額方式は、会計帳簿やインボイス、証憑を管理しない個人事業主向けに、税務当局が推定する売上と業種に基づいて一定額を納税するシンプルな方法である。売上に基づく課税は公平性を高め、徴税能力を向上させると期待される。

ハノイ市内の休業店舗、筆者撮影

しかし、実際には、小規模事業者の間ではインボイスなしで取引する習慣が⾧年根付いている。例えば、市場で果物を卸売りする業者は、各地の農家から少量ずつ商品を仕入れ、買掛・売掛で取引することも多いため、インボイスの発行が非常に困難である。加えて、電子インボイスの使用は、特に高齢の事業者にとっては負担が大きいと見られる。2026年からは、売上高が2億ドンを超える個人事業主にも売上税が拡大される。これにより、伝統的な小規模店舗は現代の小売チェーンに比べて価格競争力を失うと考えられる。

二つ目の原因とされているのが、政府による偽造品・低品質品取り締まりキャンペーンである。515日から、チン首相は全国で1か月間の偽造品・低品質品の一斉取り締まりキャンペーンを開始した。その後、公安省はこのキャンペーンを3ヶ月間に延⾧した。ほぼ毎日、何百もの偽造品、低品質品、出所不明品を製造・販売する施設が摘発されている。同時に、TikTokShopShopeeなどのECプラットフォームで商品を販売していた著名人の多くが刑事責任を問われている。ここで言う「低品質品」とは、成分が表示ラベルの70%以下の商品と定義されている。ベトナム電子商取引協会の会⾧によると、厳密に取り締まれば、ECで販売されている商品のうち合法なものはわずか2%に過ぎないと衝撃的な事実を明らかにした。

偽造品はベトナムにとって最も厄介な問題の一つであり、国内製品に対する国民の信頼を失わせ、国内のまともな業者を窮地に追い込んできた。最近、公安省との会議で、チン首相は珍しく怒りを露わにし、大規模な偽造品や模倣品の見逃しは「管理体制の緩みによるものではなく、間違いなく幹部が仕事したくないか、あるいは賄賂を受け取っていたためだ」と明確に発言した。短期的には、この混乱は多くの経済活動に影響を与え、国民の購買力を低下させる可能性がある。しかし、今回の政府の偽造品・低品質品に対する断固とした姿勢は、⾧期的にはマッサングループ(ベトナム:MSN)、モバイル・ワールド・インベストメント(ベトナム:MWG)などの小売企業や国内メーカーに対する信頼を高めることにつながるだろう。

※「亜州潮流」は、アジア新興国のトレンドを解説したコラムです。投資の推奨を目的としたものではありません。

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