中国株トピックス 中国のエネルギー大転換で脱石油・脱炭素は加速へ
2025.12.11 (木)
当記事は毎月、アイザワ証券投資情報サイトに掲載しているアイザワ・グローバルマンスリーより抜粋しております。
中国のエネルギー大転換で脱石油・脱炭素は加速へ
中国のガソリンの消費量は今年1~10月に1.23億トンと前年同期比4%減少し、軽油も同様な傾向を見せている。中国の原油輸入量はそれほど鈍化していないため、原油安を機に備蓄を増やしているとも観測される。このところ、国際エネルギー機関(IEA)は、2030年までの中国石油消費見通しを日量約100万バレル下方修正し、中国の石油需要は2027年にピークを迎え、世界全体の需要もその2年後に頭打ちとなるとのレポートを発表した。他方、中国石油化工集団(シノペック・グループ)が発表した「世界エネルギー展望2060」では、中国の石油消費が2027年までにピークに達するとも予想している。
その背景には、中国国内で電気自動車(EV)など新エネルギー車は急速に普及し、2024年だけで約4000万トンの原油を代替したと推定される。その保有台数は2020年の500万台から2025年に4000万台、2035年に1.8億台、2045年に3.1億台へと増加していき、中国原油消費全体の約半分を占める交通機関の原油消費量はこれから劇的に減っていく見通しだ(上図参照)。このほか、中国の産業構造転換・経済のサービス化(重厚⾧大産業・不動産からの脱却など)や高速鉄道の普及、電池・蓄電・デジタル化技術の進歩もその流れを後押しするものと思われる。
中国は2030年までにCO2排出のピークアウトと2060年までにカーボンニュートラルという「3060目標」を掲げており、太陽光・風力を中心に世界の再生可能エネルギー発電量の約半分を担う存在となっている。中国の再生可能エネルギーの発電比率はほぼ年に1ポイントずつ引上げられており、それに伴って火力発電の比率は低下傾向(上図参照)をたどり、中国の石炭消費量は2~3年以内に50億トン前後でピークを打つと予想されている。原油消費・輸入量の減少により、中国の一次資源の対外依存度は2045年までに10%以下にまで抑えられ、高い原油の対外依存度及びぜい弱なシーレーン(海上交通路)という安全保障上のアキレス腱をほぼ解消する可能性がある。中国のエネルギー大転換の背景には、①エネルギー安全保障の確保、②資源・エネルギー対外依存の解消、③脱炭素の実現、④新エネルギーやEV、新型電力システムなど次世代産業の育成といった「一石四鳥」の⾧期目標が掲げられており、それの実現に向けてエネルギー戦略が進められている。新エネルギー発電やEVなどの利用が広がる中、中国の脱石油・脱炭素の動きはますます加速しそうだ。
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