中国株トピックス 第15次5カ年計画は技術自立と産業力強化を後押し中
2025.11.13 (木)
当記事は毎月、アイザワ証券投資情報サイトに掲載しているアイザワ・グローバルマンスリーより抜粋しております。
第15次5カ年計画は技術自立と産業力強化を後押し中
中国共産党の「5中全会」は10月29日に閉幕し、第15次5カ年(2026~30年)計画に関するコミュニケが採択された(詳細な綱要は2026年3月開催の全人代で公表される予定)。不動産不況の⾧期化や米中対立などを背景に今後5年間の成⾧率に関する数値目標を提示せず、「質と効率の大幅な改善に基づき、持続的かつ健全な経済発展を達成する」ことを目指すとした。また、2035年までに経済力や総合的な国力を一段と向上させ、1人当たりGDPが中等先進国レベルに到達するという中⾧期目標が示された。
前回と同様、新5カ年計画も「12の重点任務」を提示しており、「近代的な産業体系の構築と実体経済の基盤強化」や「高度な科学技術の自立と新たな生産力の育成」が中心的なテーマとなっている(右上図参照)。中国の1人当たりGDPは1.3万ドル程度と高所得国の入り口に差し掛かっている。高度成⾧期を終えた後に順調に先進国入りを果たした日本と韓国の成功体験に照らせば、製造業の生産性引上げこそ他の産業部門に雇用・所得の増加をもたらす成⾧の源泉であり、「中所得国の罠」は「技術自立ができない罠」ともいえる。従って中国にとって、米国による技術封じ込めを突破するためにも、輸入代替(国産化)の加速を通じてコア技術の確保及びサプライチェーンの国内完結を促進し、製造業を中心とした産業基盤を強化することに政策リソースを優先的に配分するのが必然的な選択であろう。
技術自立と産業力強化は実質的に「中国製造2025」の後継でもあり、半導体や工作機械などハイテク分野での競争力を大きく上昇させる「製造強国」に加え、軍事力にも直結する「宇宙強国」という表現が新たに示された。対象となる製造業には、機械や自動車、電子機器、航空宇宙、生物医薬、量子科学、新エネルギー、核融合などの分野が含まれる。中国のR&D(研究開発支出)の対GDP比は昨年で2.7%と初めてOECD平均並みの水準になり、年7%以上の伸びで2030年には3.2%に達するとも予想されている。
他方、コミュニケでは不動産部門について、社会保障や教育、雇用と並ぶ民生の中核分野として再定義され、実需に沿って居住品質の向上や既存住宅のリノベーションなど安定した発展に向けた新たな方向性を示している。さらに内需拡大に向けて、「民間消費比率の顕著な上昇」と「消費・投資の促進による需給の好循環」が強調された。具体的には、消費振興行動計画の深掘りや基礎年金の引上げ、社会保障制度の強化、有給休暇制度の整備、全国統一市場の構築を妨げる障壁の撤廃などが含まれる。
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