コリアインサイト K-POP、収益モデルと舞台の拡大
2025.11.12 (水)
直近、K-POPのグローバル市場が大きな再編が目立ちます。中国本土の公演規制が依然として完全には解除されていない中、香港とマカオが新たな拠点市場として浮上しています。
2025年9月にマカオ・アウトドア・パフォーマンスベニューで開催された「THE FACT MUSIC AWARDS(TMA)」では3万人以上動員し、チケットの転売価格が高騰するなど大きな反響を呼びました。また2025年11月には7年ぶりとなる「MAMA AWARDS」が香港・カイタックスタジアム(5万人規模)で開催されます。この動きはK-POPが中華圏にとどまらず、グローバルツアー市場の中心的IPとして確固たる地位を築きつつあることを象徴しています。
さらにエンタメ株の評価軸も変化しています。従来のアルバム販売よりも、コンサート収益、グローバルIP、MD(マーチャンダイジング)事業といった収益モデルの強さが株価の方向を左右するようになっています。とくに2026年のBTS活動再開を控え、エンタメ大手4社の成長軸は再び世界市場へと向かっています。
この流れの中で韓国の主要エンタメ会社の動向を見てみたいと思います。
HYBE:長期モメンタム
HYBE(韓国:352820)は短期的な業績よりも、中長期の成長ポテンシャルが際立っている企業です。
第3四半期の売上高は6,690億ウォン(前年同期比+26.7%)、営業利益は341億ウォン(前年同期比-37.0%)と減益が予想されています。これは、新人グループ「CORTIS」やラテン市場を狙った「SANTOS BRAVOS」や「MUSA」のデビュー関連費用が集中しているためです。
しかし、2026年のBTS活動再開や、北米で急成長中の現地グループ「KATSEYE」の成果が見え始めており、企業価値の上昇余地は十分です。HYBEはIPとグローバルツアー拡張力の観点で、業界トップの地位を維持しています。
YGエンターテインメント:公演とMD収益に注目
YGエンターテインメントは第3四半期の業績回復が最も強く見込まれる企業です。
売上高は2,102億ウォン(前年同期比+151.6%)、営業利益は362億ウォンと大幅な増収増益が予想されています。「BLACKPINK」のワールドツアー収益が本格的に反映、「TREASURE」や「BABYMONSTER」の活動も続き、外形的な成長が顕著です。
またチケット収入とMD販売を組み合わせた高収益モデルを強化しており、収益性の改善が目立ちます。グローバルファンダムを基盤としたMD事業の拡大により、安定的なキャッシュフローを生み出す構造を確立しています。
JYP Entertainment Corp:ツアー実績とプラットフォーム拡張の両立
JYP Entertainment Corp(KOSDAQ:035900)は、ベテランアーティストのグローバルツアーとデジタルプラットフォーム拡張をバランスよく組み合わせ、安定的な成長を実現している企業です。
第3四半期の売上高は2,370億ウォン(前年同期比+39.0%)、営業利益は505億ウォン(前年同期比+4.3%)と堅調な結果が見込まれます。「Stray Kids」と「TWICE」それぞれのヨーロッパ、アジアツアーが業績を牽引しています。
さらに、Live Nationとのグローバル戦略パートナーシップ締結により超過収益精算モデルが改善され、収益性の向上が期待されます。加えて、中国のQQ音楽内に自社MDショップをオープンし、コンテンツとプラットフォームの連携による成長戦略が目立ちます。
エスエム・エンタテインメント:MD戦略強化とポートフォリオ再編
エスエム・エンタテインメント(KOSDAQ:041510)は、グッズや展示・ポップアップなどのファン体験型事業を強化し、売上規模を拡大している企業です。
第3四半期の売上高は3,170億ウォン(前年同期比+30.9%)、営業利益は437億ウォン(前年同期比+228.3%)と大幅な増益が予想されています。「NCT」「RIIZE」「aespa」など多様なアーティストのポップアップストアと展示が同時期に多数展開され、その影響によりMD売上が増加しています。一方で、コスト上昇により利益率がやや低くなる見込みです。
さらに来年からは若手アーティストを軸としたポートフォリオ再編を進め、グローバルツアーとコンテンツ事業を並行して強化していく方針を掲げています。
K-POPはもはや単なる文化コンテンツではありません。公演会場の規模、グローバルファンダム、IPの力が企業価値を左右する時代になっています。短期的なイベントに左右されるよりも、グローバル拡張力と収益モデルの強さに注目するところに来ていると思います。
※本記事は10月中旬に作成したものです
※本記事の業績予想については有進投資証券が作成したものです
※YGエンターテインメントはアイザワ証券では取扱いはありません
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