
コリアインサイト 韓国の文化が切り開く韓国食品のグローバル・ルネサンス
2025.09.29 (月)




最近、食品産業の競争力を左右するのは「価格」ではなく「文化」であることを示す象徴的な出来事があります。
それは、世界的に大ヒット中のNetflix作品 『KPOPガールズ!デーモン・ハンターズ』(以下、本作)です。
本作は『イカゲーム』シーズン1の累積視聴数を上回り、OST(劇中歌)「Golden」は米ビルボードHot100で4週連続1位を記録しました。特に劇中に登場した農心(ノンシム/韓国:004370)の「辛ラーメン」や「セウカン(えびせん)」は作品人気と共に自然と世界中のファンの注目を浴びています。農心はこれを活用し本作とのコラボ商品を発売、限定1,000セットの辛ラーメンは即完売となりました。
コンテンツがそのままマーケティングとなる時代、メディアIP(アニメ、ゲーム、キャラクターなどのブランド資産)と食品の融合は、消費者の感情を動かす新たな成長ドライバーとして注目されています。
見慣れない食べ物を「物語」を通じて親しませる
人は見たこともない食べ物に本能的な拒否感を覚えます。実際に幼少期の食に関する記憶がその後の食嗜好を決定づけるという研究もあります。欧米において寿司が忌避の対象から高級料理と見なされるまで40〜50年を要したのも同じ理由です。しかし、韓流メディアはこの参入障壁を劇的に引き下げました。
ドラマに頻繁に登場するチキン、キンパ、ジャージャー麺といった韓国料理は「異質」から「親しみ」に変わり、SNSやYouTubeを通じて世界中の消費者は韓国文化に憧れ、韓国食品いわゆるKフードを文化的アイデンティティの一部として消費するようになりました。文化的接点が味覚への入り口となったのです。
「感情的価値」が購買を動かす
興味深いことに、キャラクターコラボレーション飲食製品の消費価値、消費者態度、購買意図との関係を研究した論文(※)によると人気作品等のIPコラボ食品の購買要因分析では、「楽しさや所有満足感といった感情的価値が最も強く消費者意識に影響し、味や品質などの機能的価値は有意な影響を与えなかった」という結果が出ています。
※DBpia(韓国拠点の学術ポータル)内データより参照
https://www.dbpia.co.kr/journal/articleDetail?nodeId=NODE12130092&utm_source
つまり消費者は「味」よりも『自分を特別にしてくれる体験』を買っているのです。
本作のファンダム(熱狂的ファン集団)は、仮想ガールズグループ「HUNTR/X」とパラソーシャル関係を築き、強い情緒的つながりを形成しました。これがコラボ商品購入へ自然に結びついたのです。食品はもはや単なる必需品ではなく、感情的な物語を内包した「文化的消費財」へと変化していることを示しています。
Kフードの次なる戦略:文化パートナーシップ
実際、キャラクタープリント商品において食品・医薬部外品の購入経験率は40.3%と、文具・アクセサリーに次いで高い水準にあります。
これは食品業界が文化産業と連携することで、持続的成長の新たなパラダイムを構築できることを示唆しています。
<最近1年間購買したキャラクタープリント商品群>

(データ:韓国コンテンツ振興院、ユジン投資証券)
穀物価格や為替変動に揺さぶられる従来型の食品産業構造の中で、Kフードは文化という翼を得ました。コンテンツが文化的親近感を生み、文化が再び消費を生みます。
文化的想像力と産業的実行力が結びついたとき、韓国の食品は単なる商品を超え、世界中の消費者の日常と感性を満たす「文化アイコン」となることも考えられます。
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