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資産運用

年金積立金の運用から学ぶ

2025.08.05 (火)

ファイナンシャル・プランナー

石原 敬子

年金積立金の運用から学ぶ

年金積立金を管理・運用している「年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)」が、2024年度の運用状況を公表しました。GPIFでは、運用状況を四半期ごとに公開しています。年金運用は長期的な視点で行なうものなので、個人投資家が資産形成を行ううえで学べることがたくさんあります。

公的年金の年金積立金とは

年金積立金は、国民年金や厚生年金の保険料のうち、年金給付にすぐには使われなかった分のお金です。これは、将来の年金支払いに備えて、安全かつ効率的に運用されています。
年金積立金の残高は、2025年3月末時点で249兆7,821億円です。その規模の大きさから「市場のクジラ」と呼ばれることもあります。2024年3月末時点で国内販売の公募投資信託の純資産総額が248兆5,793億円。日本の投信全ての残高とほぼ同額というほどの巨大な資金です。

現在の年金積立金は「4つの資産に均等に投資」

公的年金を受け取っている人たちに支払われている金額は、長期的には賃金上昇率(名目)に連動して増加する仕組みになっています。すなわち、名目賃金上昇率が公的年金の長期的な運用目標の目安になっているともいえます。

この名目賃金上昇率は、2015年度から2024年度までは+1.7%でした。2025年度は+1.9%に引き上げられています。この目標の下で、現在の資産配分は国内債券、外国債券、国内株式、外国株式の各資産を、4分の1ずつ均等に保有する方針になっています。

年金積立金の資産配分は、市場動向やリスクなどを考慮して計算されています。【グラフ】は、2025年3月末時点における4つの資産額の配分と、各資産の運用状況です。

GPIFの運用を真似してみるのも手

よく「自分に合った運用で資産形成をしましょう」といわれます。けれど最初から「自分に合う運用」が分かっている人などいません。そこで、自分に合う運用が見つかるまでの間は、GPIFの年金積立金のポートフォリオを真似てみるのはいかがでしょうか。さらに、年金積立金の運用状況をご自身の運用成果と比べるのもよいでしょう。ご自身の資産形成の成果がうまくいっているのかどうかを判断する目安になると思います。

というのも、GPIFでは、5年ごとに検証を行なって運用目標を立てているからです。リスクを考慮し、運用目標を実現する資産配分を【グラフ1】の「基本ポートフォリオ」と定めて、それに基づく運用を行っています。5年ごとの検証では、名目賃金上昇率が変われば運用目標も変わりますし、それに基づく基本ポートフォリオも見直します。

個人投資家のみなさんが、投資環境を考慮しながら運用目標やポートフォリオを見直すのはある程度の知識や経験が必要です。けれど、公表されているGPIFの運用目標を参考にしたり真似をしたりするのは、それほど難しいことではないでしょう。実践を通して学びながら、自分なりの運用方針を徐々に確立していけばよいのではないでしょうか。

年金積立金の運用結果から学ぶ

では、GPIFの年金積立金の運用結果は、これまでどのような状況だったのでしょうか。【グラフ2】は、ポートフォリオ全体と、ポートフォリオを構成する4つの資産(国内債券、外国債券、国内株式、外国株式)における2001年度からの収益率の推移です。ポートフォリオ全体は棒グラフ。各資産は、折れ線グラフで示しています。

緑色系のグラフの上下動は、青色系のグラフの上下動に比べて大きいことが読み取れます。さらに青色系の2本の折れ線グラフに注目すると、外国債券のグラフの方が国内債券のグラフよりも上下の幅が大きくなっています。
ここからいえることは、外国株式、国内株式の価格変動リスクは比較的大きく、次に外国債券の価格変動リスクもやや大きめで、国内債券はこの中で最も価格変動リスクが小さいといえます。ただし、2024年度は国内債券の運用がマイナス4.47%で、2019年度から6年連続のマイナス運用です。これは金利が上昇したため。一般的に「債券はリスクが低め」といわれているので意外に思うかもしれませんが、「金利が上がれば債券価格は下がる」という基本的な金融の知識を持っている人には納得できる結果です。

このような学びを得られるのも運用を経験しているからです。運用を取り巻く環境と、その結果を自分なりに考えるきっかけになっていることでしょう。難しいことを調べなくても、運用状況を見て、その都度考える、分からない場合は調べます。わからなかったり難しいと思ったりしたら、頭の片隅に置いておいて、ニュースなどを見聞きした機会に思い出す程度でも十分です。ご自身の資産を積み立てるのと同時に、学びや経験も積み立ててくださいね。

【出典】年金積立金管理運用独立行政法人「2024年度の運用状況

記事提供:DZHフィナンシャルリサーチ「いまから投資」(https://imakara.traders.co.jp/

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ライター

石原 敬子

ファイナンシャル・プランナー

石原 敬子

ライフプラン→マネープラン研究所 代表 ファイナンシャル・プランナー/CFP®認定者。1級ファイナンシャル・プランニング技能士。終活アドバイザー® 大学卒業後、証券会社に約13年勤務後、2003年にファイナンシャル・プランナーの個人事務所を開業。大学で専攻した心理学と開業後に学んだコーチングを駆使した対話が強み。個人相談、マネー座談会のコーディネイター、行動を起こさせるセミナーの講師、金融関連の執筆を行う。近著は「世界一わかりやすい 図解 金融用語」(秀和システム)。

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