ゼロから学べるアイザワ投資大学

会員登録(無料)

記事検索

韓国

コリアインサイト サイクルを超え「戦略資産」へ 韓国半導体産業のメガトレンド

2026.05.28 (木)

有進投資証券

成 承桓

コリアインサイト サイクルを超え「戦略資産」へ 韓国半導体産業のメガトレンド

昨今、グローバル株式市場における半導体セクターの変動性は増しており様々な議論がある一方で韓国のメモリ半導体産業は、これまでとは全く異なる「構造的なパラダイムシフト(Paradigm Shift)」の入り口に立っています。過去の経験にとらわれ、韓国の半導体銘柄を単に「半導体の価格が上がれば買い、下がれば売るサイクル銘柄」とだけ捉えていると、間もなく訪れるであろう歴史的なバリュエーションのリレイティング(再評価)の機会を逃してしまうかもしれません。

昨今の韓国半導体市場で起きている革命的な変化と核心となるポイントを今回は解説します。

歴史的なデカップリングが示す市況価格に揺さぶられない株価

これまでサムスン電子(韓国:005930)やSKハイニックス(韓国:000660)といった韓国のメモリ企業の株価は、DRAMのスポット価格(現物価格)と連動していました。スポット価格の方向性がそのまま企業業績の方向性と認識されていたためです。実際、今回AIによって引き起こされたスーパーサイクル初頭の2026年3月まで、株価はスポット価格の上昇と同じ動きをしていました。

しかし、3月以降に驚くべき現象が見え始めました。メモリのスポット価格が横ばい、あるいは緩やかな動きを示す局面においても、半導体企業の株価はむしろ急ピッチな上昇を見せ、スポット価格に対するアウトパフォーム幅が急速に拡大したのです。

これは、市場の関心が「短期的な価格指標」から「利益の構造と持続性」に移行したためです。これまでの状況とは異なり、大手テック企業(ハイパースケーラー)が韓国企業と3〜5年単位の長期供給契約(LTA)を相次いで締結しています。これらの契約は、最低価格を保証し、前受金(前渡金)まで受け取る構造になっており、急激なダウンサイクル(不況)に突入するというメモリ産業固有のリスクを構造的に緩和しています。もはやメモリは景気に左右される資産ではなく、テック企業にとって不可欠な「戦略資産」へと再認識されているのです。

「Agentic AI」の登場と爆発するメモリ需要

コンピュータが自ら判断して行動する「Agentic AI(エージェンティックAI)」時代が2025年以降本格化し、メモリ需要は非線形的に急増しています。これまでのAIは単一の質問に対し、回答を生成して終わりでしたが「Agentic AI」は多段階の推論や長期記憶を要するため、データセンターが要求するメモリ容量と帯域幅は想像を絶します。

NVIDIAの次世代AIアクセラレータのロードマップを見ると、GPU1基あたりの高帯域幅メモリ(HBM)搭載量は、昔は16〜32GB水準でしたが、次世代の「Rubin Ultra」世代に至っては最大1TBまで拡張される予定です。これにより、DRAM全体の需要に占めるサーバー用DRAMとHBMの比率は、2025年の45%から2027年には62%まで跳ね上がり(※)、DRAMの需要成長を強力に牽引する見通しです。

さらに、NAND市場でも高速・高性能なデータ記憶装置である「eSSD(エンタープライズSSD)」の需要も爆発しています。2027年にはeSSDの比率がNAND需要全体の半分以上(53%)を突破すると予測されており(※)、需要の基盤が完全にサーバー中心へと再編されます。

2027年、歴史上類を見ない「大ショーテージ(供給不足)」が到来

大手テック企業の需要が増加している一方で供給は圧倒的に不足しています。その背景の中心にあるのが、韓国企業が市場をリードしているHBMです。HBMは微細なチップを垂直に高く積み上げる複雑な構造のため、構造的な歩留まり損失などにより同一ノード基準でウェハ1枚あたりの生産可能容量(bit)規模が、通常のDRAMに比べて半分以下(HBM4基準で約37%)に留まります(※)。つまりHBMを作れば作るほど、通常の汎用DRAMを作るための生産ラインが侵食されていく構造となっているのです。

この供給不足を解決するため、サムスン電子とSKハイニックスは半導体製造工場の新設・増設スケジュールを大幅に前倒ししていますが、技術的な難易度が極めて高くなっており、2027年までの供給拡大効果は限定的です。NANDについても、収益性の高いDRAMへの優先投資やクリーンルームの制約により、2027年までの増設は極めて困難な状況です。

結果として、需要の急増と致命的な供給制約が重なる2027年は、DRAMNANDともにショジが極大化する期間となり、韓国のメモリ大手の営業利益率は最終的に60~80%水準へと収束する可能性が高いと推測されます。

米国のハードディスク(HDD)大手であるシーゲイト・テクノロジーやウエスタンデジタルが、顧客の注文に基づく生産戦略(受注生産:BTO)の導入によって構造的な変化を遂げ、PER25倍以上にリレイティング(再評価)された事例があります。これと同じバリュエーションの地殻変動が、今、韓国のメモリ企業で始まっているのです。

ここでサムスン電子とSKハイニックスについても簡潔に解説します。

サムスン電子(韓国:005930)

長期化するメモリのスーパーサイクルにおいて、最大の恩恵を受ける企業です。DRAMNANDHBMの全製品群で圧倒的な供給能力を誇り、今後の大規模な株主還元の拡大も期待されます。

SKハイニックス(韓国:000660)

グローバルなAIテック企業と最も強固なパートナーシップを維持し、HBM市場を牽引しています。DRAMの生産に占めるHBMCAPA比率が約30%以上と業界で最も高いため、価格上昇に伴うマージン極大化の効果を最も強く享受できる企業です。

メモリ半導体はもはや単なるIT部品ではなく、国家や巨大IT企業の死活をかけたインフラであり「戦略資産」です。2026年から2027年にかけて繰り広げられる韓国半導体産業の構造的な大転換と、圧倒的な業績成長はこれからも続くでしょう。

GartnerTrendForceBloomberg等のデータより有進投資証券算出

ご留意事項

金融商品等の取引に関するリスクおよび留意点等

お客様にご負担いただく手数料について

免責事項

本資料は証券投資の参考となる情報の提供を目的としたものです。投資に関する最終決定は、お客様ご自身による判断でお決めください。本資料は企業取材等に基づき作成していますが、その正確性・完全性を全面的に保証するものではありません。結論は作成時点での執筆者による予測・判断の集約であり、その後の状況変化に応じて予告なく変更することがあります。このレポートの権利は弊社に帰属しており、いかなる目的であれ、無断で複製または転送等を行わないようにお願いいたします。

ライター

成 承桓

有進投資証券

成 承桓

全南大学卒業後、未来アセット証券、教保証券、SK証券を経て、2008年に有進投資証券入社。国際営業チーム、海外事業チーム、海外投資チームを経て、2021年よりマルチ金融チームで日本の不動産及び金融商品を担当している。趣味はランニングと映画鑑賞。

合わせて読みたい

このカテゴリの他の記事

韓国 コリアインサイト K-POP、収益モデルと舞台の拡大

コリアインサイト K-POP、収益モデルと舞台の拡大

2025.11.12 (水)

韓国 コリアインサイト 高麗亜鉛、経営権争いが本格化

コリアインサイト 高麗亜鉛、経営権争いが本格化

2024.10.31 (木)

韓国 コリアインサイト 日韓往来がより活発に

コリアインサイト 日韓往来がより活発に

2023.02.17 (金)

韓国 コリアインサイト マクドナルドよりも多い韓国のチキン店

コリアインサイト マクドナルドよりも多い韓国のチキン店

2021.06.07 (月)

人気記事

アイザワ証券公式SNSアカウント