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コリアインサイト 高麗亜鉛、経営権争いが本格化

2024.10.31 (木)

有進投資証券

成 承桓

コリアインサイト 高麗亜鉛、経営権争いが本格化

2024年10月現在、韓国の主要経済メディアで最も話題なっているのは、高麗亜鉛(韓国:010130)という亜鉛、銀などの非鉄金属分野世界1位の企業の経営権争いです。2022年から始まった争いは次第に悪化し、2024年9月、現高麗亜鉛の会長である崔潤範(チェ・ユンボム)氏と反対勢力が互いに株式公開買付けを開始し、公開買付公表前の株価から1ヶ月後には約40%上昇しました。

韓国の経営権争いの主な原因は、企業を支配しているオーナー一族の不和、意見の違いによって発生する場合がほとんどですが、今回の高麗亜鉛の経営権争いは少し違う類です。

(出所:NAVER)

1. 経営権争いの原因

サムスン電子(韓国:005930)の李(イ)氏、LG(韓国:003550)の具(ク)氏、ロッテ(韓国:004990)の辛(シン)氏(日本名:重光氏)のように、一つの一族が企業を経営する場合が韓国では一般的です。 しかし、高麗亜鉛は韓国の財閥の中では珍しい非同族経営で成り上がりました。共同創業者家である張氏と崔氏がそれぞれの役割を分担し、張氏一族では株式を所有し、崔氏一族では経営を担当しました。両家は約60年間安定的に高麗亜鉛を経営してきましたが、2022年に崔氏家の3代目である崔潤範(チェ・ユンボム)会長が就任し、状況は変わり始めました。

根本的な問題は、3代目に入ってからお互いの親密な関係が薄れたことです。これによって、企業の意思決定に衝突がおこりました。崔会長は「1代目が創業、2代目が安定な経営に力を注いだなら、私は新しい事業を始める」と言い、「トロイカドライブ(TROIKA DRIVE)」と呼ばれる再生可能エネルギー、電池素材、リサイクル事業を含める新たなプロジェクトに進出しはじめました。大きな資金が必要なので、借入金が2018年の300億ウォンから2022年には1兆ウォンを超えました。

高麗亜鉛の既存の経営方針であった「借金なしの経営」を守るよう、張氏一族の3代目である張世俊(チャン・セジュン、永豊(韓国:000670)の顧問役)は何度も反対しましたが、崔会長はこれを経営干渉とみなしました。2023年、崔会長は高麗亜鉛に対する自分の支配力を高めるために、現代自動車、LG化学、韓火グループなどの韓国大企業をホワイトナイトとして巻き込みました。

※(株)永豊 : 高麗亜鉛の関係会社。最大株主は張顧問。

2024年3月の高麗亜鉛の株主総会では、配当額をめぐって張顧問と崔会長の対決が行われ、同年6月、崔会長は張顧問が支配していた系列会社のソリン商事の経営権を確保しました。危機感を感じた張顧問は、アジア1位の独立系プライベート・エクイティ・ファンドのMBKパートナーズと連携し、高麗亜鉛に対する株式公開買付けを開始しました。

2. 高麗亜鉛の株主構成と株式公開買付

高麗亜鉛の株主構成は3つに分けられています。「崔会長と友好勢力」「張顧問とMBKパートナーズ」「韓国国民年金とその他の勢力」です。

10月14日現在、「崔会長と友好勢力」の持株比率は34.0%、「張顧問とMBKパートナーズ」は38.5%です。「その他の勢力である韓国国民年金」は7.0%、自己株式2.5%、パッシブファンド3.3%、浮動株15%です。持株比率を高めるため、崔会長と張顧問はともに流通株を対象に公開買付けを宣言しました。 9月13日、張顧問側が先に1株当たり66万ウォンの買付価格を発表し、26日に75万ウォン、10月4日に83万ウォンと買付価格を引き上げました。これに対し、崔会長は10月2日に1株当たり83万ウォンの買付を宣言し、11日には89万ウォンに買付価格を引き上げました。

10月9日、MBKパートナーズは「83万ウォン以上は適正価値より高いため、もう買付価格は上げない」と発表しました。また、韓国の規制当局、高麗亜鉛の所在地の韓国蔚山(ウルサン)市の政治家も声を上げているし、これ以上の買付価格競争は容易ではないと思われます。

3. 展望

高麗亜鉛の経営権紛争いの変数は2つあります。一つ目は韓国国民年金公団(NPS)の判断です。7.83%の高麗亜鉛の株を持っている韓国国民年金公団は、キャスティングボートとして株主総会で重要な役割を果たすことができます。国民年金は2年前、張顧問の高麗亜鉛の社内取締役選任に対して反対しましたし、今年3月の高麗亜鉛株主総会では崔会長を支持しました。 もちろん、韓国国民年金公団は公共機関であるため、一方的に誰かを味方ことは容易ではありません。

しかし、MBKパートナーズの長期的な目標が韓国国民年金公団の収益率に悪影響を及ぼす可能性があるため、崔会長の味方になる可能性はあると思われます。

この経営権争いの結果は、一方の勝利で終わる可能性は低いです。両方ともに過半数以上の株を確保することが難しいからです。 問題は、経営権争いの過程で急増した負債と利払費が急増です。

借入金、社債発行で負債が2兆7千億ウォン増加し、利払費は年間1,860億ウォンに達します。高麗亜鉛は新規事業のために年間1~2兆ウォンの設備投資を計画しましたが、これが計画通りに進まない可能性があるでしょう。

※永豊はアイザワ証券では取扱っておりません。

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ライター

成 承桓

有進投資証券

成 承桓

全南大学卒業後 、 未来アセット証券 、 教保証券 、 SK 証券を経て 、 2008 年に有進投資証券入社 。 国際営業チーム 、海外事業 チーム 、 海外投資チームを 経て 、 2021 年よりマルチ金融チームで日本の不動産及び金融商品を 担当している 。趣味はランニングと映画鑑賞 。

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