以新伝心 インバウンドバブルで牛丼1杯2000円?
2024.03.11 (月)
当記事は2024年3月11日発行「アイザワ・グローバルマンスリー3月号」より抜粋しております。
「アイザワ・グローバルマンスリー」は「投資情報サイト」へ掲載しております。
インバウンドバブルで牛丼1杯2000円?
日本各地でインバウンドバブルが再来している。世界屈指のスキーリゾートである北海道のニセコでは、「牛丼1杯2000円」「カレー1杯3000円」とまさにインバウンドバブルが起きている。この地域では、冬になると多くの外国人観光客で埋め尽くされ、多言語が飛び交い、それに合わせて看板も英語表記、値段もインバウンド価格になっている。
ニセコだけではない。東京の豊洲市場では、1万円超えのインバウン丼外国人観光客をターゲットにした高価格帯の海鮮丼を指す造語が話題を呼んでいる。円安の影響とともに、インバウンド消費のプレミアム化が進んでいるようだ。コロナ禍からの回復で、インバウンドを始めとした景気の良い話が出ている一方、国内の景気は少し暗い。
先日発表された日本の2023年1012月の実質GDP成長率は、予想外にも2四半期連続のマイナス成長となり、ドル換算の名目GDPはドイツに抜かれ世界第4位に転落した。実質GDP成長率の需要別寄与度を見ると、純輸出が前期比+0.2%と増加した一方で、国内需要が同比-0.3%と押し下げている。
また、物価上昇により、実質賃金は21か月連続マイナスで推移するなど、国内の消費者心理の重しとなっている。春闘による賃上げも期待されてはいるものの、2024年1月のコアコアCPI生鮮食品及びエネルギーを除く消費者物価指数)は、前年同月比3.5%と高止まりが続いており、年内、実質賃金がプラスに転じるかは不透明である。
足元の環境を踏まえ、国内では節約志向が高まり、コスパ重視の消費トレンドが継続しそうだ。代表的な銘柄として、ニトリHDや神戸物産、ファーストリテイリングなどが思い当たる。これらの企業は自社で商品を企画・製造し、販売までを行うSPA(製造小売業)と呼ばれ、中間マージンの削減によりコスパの高い商品提供を可能としている。中でも神戸物産が運営する業務スーパーは、個人的に利用していることもあり、コスパの良さを実感する。
例えば、プライベート商品の冷凍ブロッコリー500g)が181円税込み)とインフレを全く感じさせない価格である。一方で、コスパはただ安ければ良いというわけではない。値段が安くても満足感を得られなければ買われないし、逆もまた然りである。相次ぐ値上げの中、小売各社はどのようにして商品の付加価値を高め、コスパを高めることができるかが今後の勝負の分かれ目になるだろう。