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「トランプ相互関税ショック」が令和のブラックマンデーと異なる点を解説します

2025.04.15 (火)

独立型ファイナンシャルプランナー

工藤 崇

「トランプ相互関税ショック」が令和のブラックマンデーと異なる点を解説します

トランプ米大統領が日本時間4月3日に発表した相互関税の強化表明により、4月3日(木)の日経平均は一時期1600円以上の下落となりました。今回の相互関税には、米国へのすべての輸入品に少なくとも10%の基本関税をかけることが含まれ、日本、EU、中国など約60カ国には9日から税率を上乗せするとうものです。
日経平均の終値は3万4,735円(前日比989円安)で引けています。4日の始値は3万4,304円です。終値は少し持ち直したものの、一時期の下落幅は2024年8月の「令和のブラックマンデー」以来で、新NISAを背景に資産運用をはじめた個人投資家は評価減に汲々としています。

「狼狽売りをしないように」は変わらない

大幅下落を目にすると、この状況が継続するのではと慌てて売却に走る「狼狽売り」をする個人投資家が多いです。大切な資産ですので、その気持ちはとてもよくわかります。米国株の下落と日銀の利上げで発生した令和のブラックマンデーも、多くの狼狽売りが行われました。結果論ですが、当時の下落は数日で収まり影響は限定的、もとの水準に戻していきました。
今回の「トランプ関税ショック」も、基本的に狼狽売りをしない、という方針は変わりません。各企業の業績や信頼感は毀損していないため、相場に流されて下落している個別株、関連の投信も多いでしょう。ただ、注意点が2つありますので解説します。

関税ショックは終わりではない

令和のブラックマンデーには、少なくとも予兆がありました。数年にわたって伸長する米株相場に対し、天井と想定する意見は増えていました。また日銀の利上げに対しても、諸外国との金利差は数カ月前にマイナス金利を撤廃した動きから、「いよいよ(プラスの)金利導入が到来するのでは」という予測があったのも事実です。なぜ暴落が起きたのは、不幸にも両者のタイミングが偶然合わさったため、という見方もあります。

では今回の関税ショックはどうでしょうか。少なくとも関税ショックや派生する為替に対し、アメリカ国民が意思を示すのは2026年秋の中間選挙です。選挙前に行われるメディアの調査に対して、トランプ氏はいつもの調子で「そんなものはフェイクニュースだ」と意に介さない姿勢を見せています。そう考えると、株価低迷は半年から1年、もしくは中間選挙の選挙戦まで低迷を続ける可能性すらあります。実際にトランプ氏は日本時間4月4日のニュースで「(低迷している)株価はいずれ上がる。私は気にしていない」と言及しました。
個人投資家の方々は今回の下落を、2024年の再現では無く、さらに長期的なものとして向き合う必要があります。

ライフプランに合わせた「塩漬け」を

そこで我々のような専門家が示すことのできるアドバイスは、ライフプランに合わせた「塩漬け」です。この言葉を噛み砕いていきましょう。

まず後者の塩漬けとは、狼狽売りをせずにホールドを続けることです。本来は株価推移を随時確認しながらの塩漬けを勧めるのですが、今日に限っては「投資したことを忘れて放っておく」ことも推奨します。株価低迷と時勢の不確実性は、どう考えても精神衛生に悪いためです。
例外は、「ライフプランにより(中間選挙までに)現金化が必要な場合」です。

ライフプランに合わせた現金化

子どもの教育費や住宅購入の頭金など、世界経済の回復を待っていられないというケースも多々あるでしょう。その場合は、最善のタイミングで現金化をしましょう。インフレ(インフレーションリスクは確かに否定できませんが、これからの世界の不確実性は、それを遥かに凌駕するものです。では国際経済やファンダメンタルズで見たときの、最適なタイミングになりそうなものはどこにあるでしょうか。

関税政策の一歩後退

トランプ氏が今回の施策を一歩後退させるタイミングです。さすがに1(アメリカ):nの図式をどこまでも継続するには限界があります。世界中を相手に「かまして」、国ごとにアメリカ優位な貿易交渉を進める本音は間違いありません。
ここまで過激な関税措置であるだけに、「一部撤回」は大きなインパクトがあります。アメリカの株価のほか、相互関税を逃れた特定国の株価が回復するタイミングを待ちます。

アメリカの利下げ

関税を支払うのはアメリカ国民です。今後、輸入による物価高騰などインフレが更に長期化すると指摘されています。トランプ氏が代わりに打ち出すのが更なる利下げです。FRBは当初、「2024年の利下げは年3回だったが、2025年は2回にする」と言及していました。これに対し、政府側から圧力がかかっているという報道があります。
FOMCの予定(外部リンク)を見ながら、利下げの予想タイミングとライフプランを照合していきましょう。

2028年大統領選の民主党候補

今回の施策は中間選挙を通り越して、2028年の大統領選挙に号砲が鳴ったともいえます。(現行法下では)トランプ氏は出馬できないため、副大統領のバンズ氏をはじめとした後継者がまず候補として浮かびます。
大統領・上院・下院の多数派を共和党が占めるトリプルレッドの状況下では、対する民主党も「顔」がいないと勝負になりません。ハリス前副大統領やエマニュエル前日本大使など、次期トップの具体名も出てきています。トランプ政権の強硬的な政治が続けば、対抗軸としての民主党候補も、早い段階から取り立たされるのではないでしょうか。株式相場としては、平時に戻す重要人物として、大きく取り上げられる可能性も高いです。

世界経済は混乱期に入りました。出所不明な陰謀論に流されることなく、信頼できる情報を集め、情報を選別する力を強化し大切な資産を護っていきましょう。

記事提供:DZHフィナンシャルリサーチ「いまから投資」(https://imakara.traders.co.jp/

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ライター

工藤 崇

独立型ファイナンシャルプランナー

工藤 崇

株式会社FP-MYS 代表取締役 1982年北海道生まれ。相続×Fintechサービス「レタプラ」開発・運営。2022年夏より金融教育のプロダクト提供。上場企業の多数の執筆・セミナー講師の実績を有する独立型ファイナンシャルプランナー(FP)。

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