
ザ 語源 第40回 語源から考えるパーパス経営
2025.08.10 (日)




語源から考えるパーパス経営
近年、企業の「存在意義」や「存在目的・価値」を社会的観点から見直し、または再定義して経営を行っていく「パーパス経営」が注目されています。「パーパス:purpose」は「目的」や「意図」と訳されます。今回は「パーパス:purpose」という言葉の語源を紐解いていった上で「パーパス経営」に必要なものは何か?について考えていきたいと思います。
「purpose」は「pur」と「pose」に分けられ、ラテン語の「pro:~前に」と「pono:置く」、つまり「前に置く」が語源です。「pono:置く」という言葉を語源とする単語は他に、「propose:提案、(結婚申入れの際の)プロポーズ」や「deposit:ディポジット:預金」などがあります。

日本語の「目的」という言葉も「目の前に的(まと)を置く」が語源と考えられ、英語の「purpose」と共通した意味があります。

「パーパス」の語源を踏まえた上で「パーパス経営」に必要なものはなにか?について考えます。
「パーパス経営」が注目される前から「ミッション:使命」や「ビジョン:あるべき姿」を掲げ、企業の方向性を示す取組みは存在していました。「ミッション」や「ビジョン」は「パーパス」と同じように企業が目指す方向性を言語化したものですが、両者には少し違いがあります。「ミッション」や「ビジョン」は自分たちがこうありたいという視点であるのに対し、「パーパス」は社会的に見て自らの存在意義や目的を明らかにするという観点の違いがあります。「ミッション:mission」はラテン語の「mittere(ミッテレ):送る」が語源です。神からの贈物(言葉)を送り届けるという意味が時代を経て「使命」という意味に変化したと考えられています。
「mittere:送る」を共通の語源としている単語は他に「message:伝言」や「commission:委託」、「missile:ミサイル」などがあります。「ミッション」が“他者から与えられたもの”という意味合いがあるのに対し、「パーパス」は自発的に、“自分で”というニュアンスを含んでいます。
このように、「パーパス」には何のために存在するのか?どんな目的をもっているのか?を自分事と捉えるという意味を含んでいることから、「パーパス経営」には社員が「パーパス」に対し共感している、自分事(マイパーパス)としている必要があると思います。また同じ目的や意図に向かい「行動」、「共鳴」することが重要なのではと思います。

「目的」を明らかにすることで、経営がより強固なものになるという取組みは「投資」や「資産運用」の世界でも応用されています。「投資」に「目的」や「目標」「ゴール」を設け、何のために投資するのか?を明らかにする資産運用の手法です。
人間は感情に左右されるもので常に合理的に行動・判断できるものではありません。投資商品が値下がりして過度に悲観し、早期売却してしまうこともあります。一方で利益が出て「もっと儲けたい」という気持ちが先行し必要以上にリスク商品に投資する場合もあります。そこで「何のために」「いくら必要か」という「ゴール」を付ければ、一時的な市場(私情)変動や過度な感情(損得勘定)に揺さぶられることなく資産管理が可能となり「ゴール」まで長期投資を全うできるという訳です。
最後に日本に「パーパス経営」は広がるのか?について展望を述べます。
「パーパス経営」は米国が発祥とみられていますが、日本の企業こそ「パーパス経営」に親和性があり、「パーパス経営」が広がる要素があると考えます。日本には長い歴史をもつ企業が数多くあります。「パーパス」は新たに策定されるものではなくその企業に元々ある「存在意義」や「創業当時の社会に対する志」を思い起こし再定義されたものです。歴史のある企業は社会的な意義を持ち社会が必要する価値を提供し続けているから存在してきたのではないでしょうか。従って歴史ある日本の企業こそ「パーパス経営」が浸透・進展していくのではないかと思います。
※本記事で解説する内容について、実際の言葉の成り立ちや、一般的とされる説と異なる場合がございます。
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