知っておくべき最低賃金制度 制度の概要や最低賃金の全国一覧を解説
2026.08.28 (金)
最低賃金制度というものをご存知ですか?アルバイトや仕事を探す際に賃金の目安として自分の地域の最低賃金を調べたことがある人もいると思います。
本記事では、最低賃金制度の概要から地域別の最低賃金などを解説しています。
最低賃金とは
最低賃金とは、労働者の生活を守るために国が定める「賃金の最低限度」で、使用者は原則として最低限度以上の賃金を支払う義務があります。雇用契約でどのように取り決めていても、国が定める最低額を割り込む支払いは禁止されており、最低賃金は単なる目安ではなく、守らなければならない法的な基準です。そのため、双方の同意があったとしても最低賃金を下回る賃金による契約は無効となり最低賃金額と同様の定めをしたものとみなされます。
また最低賃金を理解するポイントは「時間額」で定められる点です。時給だけでなく月給・日給の働き方でも、最終的に時間あたりに直して最低賃金を下回っていないか確認する必要があります。
最低賃金制度の目的
最低賃金は中央最低賃金審議会で毎年審議されている議題です。最低賃金制度として、国が雇用者と労働者における最低賃金を定めている目的は主に4点挙げられます。
参照元:厚生労働省「最低賃金制度の意義・役割について」(※外部サイトへ移動します)
- 労働条件の改善
賃金の低廉な労働者の賃金の上昇を図るという点において、労働条件の現状を改善します。 - 労働者の生活の安定
労働者賃金の最低額を保障することによって労働者の生活の安定を図ります。市場任せで賃金が極端に低くなると、働いていても生活が成り立たない層が生まれ、社会全体の不安定要因になる可能性があります。 - 労働力の質的向上
最低賃金は賃金だけでなく労働能力の質を支える役割も持ちます。賃金上昇による優秀な労働者の雇用や、生活安定による労働能率の増進、不完全就業者の減少などが見込まれます。 - 事業の公正な競争の確保
最低賃金を守らずに人件費を不当に抑える事業者がいると、守っている事業者が価格競争で不利になります。最低賃金は、事業間の過当な競争を排除し、ルールを守る企業が損をしないための土台でもあります。
最低賃金の対象になる賃金・ならない賃金
最低賃金の要件を満たしているか確認する際、支払われる賃金のうち「対象となる賃金」と「除外する賃金」を正しく区分する必要があります。
最低賃金の対象となる賃金は、毎月支払われる基本的な賃金です。基本給や所定労働時間に対応する各種手当など、「通常の労働に対して支払われる部分」が対象となります。
一方で、賞与(ボーナス)や時間外・休日・深夜手当、通勤手当などでは除外対象の賃金となります。総支給が高く見えても、通常の賃金部分が最低賃金以上でなければ要件を満たしません。「手当」という名称でも除外されるものをしっかりと確認し、区分を整理しましょう。本来除外であるものを含めた賃金で確認してしまうと、「通常労働の対する賃金が最低賃金を下回る」ということを引き起こす可能性があります。
参照元:厚生労働省「最低賃金の対象となる賃金」より(※外部サイトへ移動します)
最低賃金は「時間制」
給与には主に「時給制」「日給制」「月給制」がありますが、最低賃金を確認するには「時間額」で比較する必要があります。言葉の通り「1時間あたりの賃金」を算出し、最低賃金の要件を満たしているか確認します。ここで重要なのは、通勤手当や精皆勤手当など、比較から除外される手当を足して判断しないことです。
「時給制」は手当などの対象外を除き、設定されている時給が最低賃金の時間額以上か比較することで確認できます。一方、「日給制」や「月給制」は時間ベースで算出する必要があります。「日給制」は、日給額を1日の所定労働時間で割り、時間あたりに換算して最低賃金と比較します。たとえば所定労働時間が8時間なら、日給÷8で時給換算し、最低賃金以上かを確認します。「月給制」は、月給額を1か月の所定労働時間で割って時給換算するのが基本です。所定労働時間は就業規則や雇用契約、勤務表などで確認できるため、推定ではなく会社の定めに基づく時間数で計算します。
他にも出来高払制その他の請負制によって定められた賃金の場合やこれらに該当しない賃金という場合もそれぞれ算出の方法が異なります。詳しくは厚生労働省の「最低賃金額以上かどうかを確認する方法」(※外部サイトへ移動します)で確認できます。
最低賃金の種類と対象者
最低賃金には、「地域別最低賃金」と「特定最低賃金」の2種類があります。
地域別最低賃金は、都道府県別に設定された最低賃金で、職種や雇用形態に関係なくすべての労働者に適用されます。正社員だけでなく、パート、アルバイト、契約社員、短時間勤務などでも、雇われて働いている場合は地域別最低賃金の対象です。一般的に「最低賃金」といわれる場合、この地域別最低賃金を指すことが多く、採用時の時給設定や最低賃金改定時の全体チェックの土台になります。
一方、特定最低賃金は、申出に基づき地域別最低賃金よりも金額水準の高い最低賃金を定めることが必要と認めた特定産業に設定される最低賃金で、主にその産業の基幹的な労働者等に適用されます。しかし地域別最低賃金の大幅な引上げが続いており、結果として地域別最低賃金を下回るものが近年増加している傾向にあります。
地域別最低賃金と特定最低賃金の両方に該当する場合は設定賃金が「高い方」が適用されます。そのため自社が特定最低賃金の対象となるか確認したうえで、所在地の地域別最低賃金を確認、比較すると漏れを防ぎやすくなります。
地域別最低賃金の適用基準
地域別最低賃金は都道府県ごとに定められており、どの都道府県の最低賃金が適用されるかは「働く事業所の所在地」が基準となります。そのため同じ会社でも、東京の事業所で働く人と地方の事業所で働く人では、適用される地域別最低賃金が異なります。
例えば「会社の本社:A県、勤務地:B県、住居:C県」という場合は、「働く事業所の所在地」は勤務地となるので、B県の地域別最低賃金が適用されます。ほかにも在宅勤務(テレワーク)の場合は「会社の本社:D県、勤務先の所在地:E県、住居:F県」であれば、E県の地域別最低賃金が適用されます。どこで働いているか、ではなく、所属している「事業所の所在地」がキーとなります。派遣労働者の場合は原則として「派遣先」の所在地が適用されます。派遣元ではなく、実際に就労する現場(事業所)の地域別最低賃金が基準となるので注意が必要です。
最低賃金の決定フローと改定時期
最低賃金は、賃金の実態調査結果を参考に、中央最低賃金審議会(中央最低賃金審議会)で金額改定の目安額が審議されます。目安額を決めることで全国の整合性を図ります。その後、中央最低賃金審議会で決定した目安額は地方最低賃金審議会に提示され、地方最低賃金審議会はその目安額と地域の経済状況等に基づいて地方別最低賃金額を審議、決定します。
(特定最低賃金の場合は、諮問の前に関係労使の申出に基づく必要性の審議が追加されます。)
中央最低賃金審議会は毎年6~8月頃に金額改定の目安額を決めますが、地方最低賃金審議会における審議および決定、効力発生等のスケジュール感はそれぞれ都道府県によって異なります。この地域別最低賃金の改定は毎年行われますので、年1回の定期点検が重要です。また使用者は「効力発生日」から新しい最低賃金に適用する必要があるので、施行のタイミングを正確に把握しておく必要があります。
地域別最低賃金の全国一覧(令和7年度)
地域別最低賃金は都道府県ごとに金額と発効日が定められているため、所在地の金額を一覧で確認することが重要です。最低賃金は厚生労働省が公表する「地域別最低賃金の全国一覧」(※外部サイトへ移動します)で確認することができます。複数の都道府県に事業所がある場合は、同一の職種・同一の給与体系でも、最低賃金は拠点ごとに別管理が必要です。事業所側は比較対象賃金を時給換算して、発効日以降の勤務分が下回っていないかをチェックしましょう。
地域別最低賃金額改定情報(令和8年度)
2026年7月28日に開催された第75回中央最低賃金審議会で令和8年度の今年度の地域別最低賃金額改定の目安について公表がありました。中央最低賃金審議会の公表内容はこちら(※外部サイトに移動します)で見ることができます。
全都道府県は経済実態に応じて、A~Cのランクに区分されており、ランクごとに引上げ額の目安が提示されています。令和8年度のランクと引上げ目安額は以下の通りです。
これを基に各地方最低賃金審議会が地域における賃金実態調査や参考人の意見等も踏まえた調査審議を行い、最終的に各都道府県労働局長が地域別最低賃金額を決定します。最終的な金額の決定時期は地域によって異なり、順次発効する流れとなりますので、どれくらい変わるのか、いつから適応なのか、適宜チェックしておきましょう。
まとめ
最低賃金とは、国が定める「賃金の最低限度」で、使用者はこれを下回る賃金を支払うことが禁止とされています。最低賃金制度は雇用形態に問わず雇用される人が対象となりますので、使用者、労働者のどちらも関心を寄せておいた方がいい制度です。最低賃金を知っておくことは、労働者自身の職探しや生活水準の指標にも役立ちます。
最低賃金は毎年改定されるため、ニュースでも取り上げられやすいトピックです。中央最低賃金審議会や地方最低賃金審議会の動きや報告に注意し、発効日を意識しておくとよいでしょう。
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