
コリアインサイト 3,000ポイントを突破したKOSPI、その背景にある動き
2025.07.02 (水)




足元のKOSPI(韓国総合株価指数)が3,000ポイントを突破し、投資家の期待感が一気に高まっています。これは2021年以来、約3年半ぶりの記録であり、単なる数値以上の意味を持ちます。この上昇を牽引した要因と、今後の見通しついてお伝えいたします。
KOSPI上昇の背景
まず今回のKOSPI上昇は、企業の実績というよりも投資心理の回復と豊富な流動性、そして政策への期待感です。韓国政府は、約20兆ウォン規模の第2次補正予算を確定し、内需テコ入れと新産業の支援に乗り出しました。消費クーポン、地域商品券、AI・Kコンテンツ(K-POPや韓国ドラマ等)・バイオなど戦略産業への財政投入が行われ、関連銘柄の株価上昇につながっています。特にNAVER(韓国:035420)、カカオ(韓国:035720)、アモーレパシフィック(韓国:090430)、CJ CGVなど政策恩恵を受ける銘柄が市場を牽引しました。
※アイザワ証券ではCJ CGVの取扱いはありません。
外国人投資家の動向にも注目です。韓国取引所(KRX)において2024年8月から2025年4月まで約40兆ウォンの売越しを記録した外国人投資家は、直近2か月程度で約6兆ウォンの買越しに転じました。これはドル安とウォン高の流れ、そして年内の米国FRBの利下げ観測を背景とする資金の再流入と解釈できます。実際、過去にもウォン高となった際に外国人資金が流入する傾向が確認されています。
また、世界的な流動性の拡大も株式市場にとって追い風となっています。現在、世界全体のM2(※)流動性は過去最高となる111兆ドルに達しており、リスク資産に対する選好が高まる中、韓国市場に対しても肯定的な影響を与えています。
※M2:現金通貨+預金通貨+準通貨+CD(預金通貨、準通貨、CDの発行者は、国内銀行等)
好材料に潜むリスク
このように好材料が重なる中でも、冷静な視点を保つ必要があります。今回の上昇が企業の実績というよりも期待感に基づいている点は、リスク要因ともなり得ると思います。急騰した銘柄を中心とした利益確定の売り圧力や米国の金利動向、地政学的リスクなどの外部要因にも注意が必要です。
KOSPIの今後の見通し
今後のKOSPIは、実績相場へと移行できるかどうかにかかっています。韓国大手証券会社であるハナ証券の最近のレポートでは、KOSPI上場企業の2025年の純利益を210兆ウォンと予測し、平均PER(株価収益率)12.3倍を適用した場合、指数の上限は3,240ポイントに達すると見ています。主導業種としては、半導体、産業財(機械・造船・防衛産業)、ソフトウエア、メディアなどが挙げられ、下半期以降にはIT中小型株やバイオ関連の回復も期待されています。
(参照元:ハナ証券2025年6月23日Global Asset Research「화수분전략」https://www.hanaw.com/download/research/FileServer/WEB/strategy/market/2025/06/21/lee_250623.pdf(外部リンク))※韓国語のページに遷移します。
今回の3,000ポイント突破はゴールではなく、新たなステップへの進みに思われます。しかし、それが「持続可能な上昇」となるためには、政策の実効性、企業業績の伴走、そして流動性の安定的な維持が必要です。投資家も短期的な指数の動きに一喜一憂するのではなく、構造的変化と利益サイクルに注目した投資戦略に転換するタイミングだと思います。
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