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以新伝心 東証改革を振り返る。東証の意図は?

2024.06.17 (月)

アイザワ証券

市場情報部

以新伝心 東証改革を振り返る。東証の意図は?

東証改革を振り返る。東証の意図は?

東証の市場区分変更からはや2年。日経平均株価が40000円に到達するなど未曾有の領域に突入した日本株ですが、その裏で東証は2023年3月に「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」や、PBR(株価純資産倍率)1倍割れ企業に対する経営改善を上場企業に対して要請している。本稿では、こうした一連の市場改革を通じて東証は一体何を目指しているのか、株高も曲がり角に差し掛かったこのタイミングで改めて紐解いていきたい。

結論から先に申し上げると、東証の目指すところ、それは投資家と企業の目線を合わせることだと言える。“PBR”や“資本コスト“といった概念はそのためのツールにすぎない。では、投資家と企業の目線を合わせるとは、一体どういうことだろうか?この点を考える上では、投資家と一般的な企業(経営者)の考え方の違いを理解する必要がある。例を挙げてみよう。

①投資家=1万円投資して、1千円利益(10%)を上げたい
②企業=1万円売り上げ、1千円利益(10%)を上げたい

一見同じ10%の利益を目指しているように見えるが、この違いがわかるだろうか?答えは、利益を生み出す1万円の性質が違う、ということである。では、企業の売上は一体どこからくるのだろうか?パン屋をイメージするならば、パンを焼くためのオーブンが必要となる。オーブンの導入にはお金がかかるので、投資である。再度見てみよう。

③企業=1万円オーブンに投資、(パンを1万円売り上げ)1千円利益(10%)を上げたい

如何だろうか?投資と利益という、投資家と同じ図式になっている。企業(経営者)は、ともすれば②のような売上・利益をベースにした考え方に終始しがちだ。そこで③のような投資家的な考えを経営に取り入れるよう促しているのが、一連の東証改革である。

ここからさらに一歩踏み込んで、“資本コスト”について考えてみよう。投資家の皆さんは、投資をする際に次のように考えるのではないだろうか?「1万円を投資したら、1千円くらい上がって欲しい」と。ここでは仮に1千円としたが、漠然とでも、これくらい利益が出て欲しいというイメージを誰しもが持つと思われる。この投資家がイメージするリターンに名前と根拠を与えたものが”資本コスト”である。つまり、東証の言う「資本コストを意識した経営」とは「投資家の期待するリターン
を基準にした効率的な経営」と言い換えることができる。投資家が期待するリターン以上の利益(ROE)を上げることができれば、保有する純資産(PBR1倍)以上の市場評価が得られるというわけだ。こうして順番に見てみると東証のメッセージが読み解けるのではないだろうか?とはいえ、東証改革はまだまだ始まったばかりで、企業の対応にも差がある。今後東証や企業がどう変化していくのか、注目したい。

※「以新伝心」は、新しい出来事に着目し、心に伝えることをコンセプトにしたコラムです。投資の推奨を目的としたものではありません。

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