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ザ 語源 第41回 人間がAIに優るスキルを漢字の由来から考察する

2026.03.27 (金)

アイザワ証券 ファイナンシャルアドバイザリー本部

飯田 裕康

ザ 語源 第41回 人間がAIに優るスキルを漢字の由来から考察する

「人間がAI(人工知能)に優る究極のスキルはなにか?」とAIに質問してみたところ、ゼロから創造する能力、物事に意味付けをする力、倫理観に基づく判断力、不安や苦悩への共感力の4つが挙げられました。今回は4つ目に挙がった「共感力」について英単語や漢字の由来をもとに解説し、人間が磨くべきスキルとはなにか、考察したいと思います。

3つの英単語から読み解く「共感」

「共感」にあたる英単語は「sympathy:シンパシー」や「empathy:エンパシー」、そして「compassion:コンパッション」があります。それぞれの違いについて語源をもとに解説します。

3つの単語は接頭語の「sym(共に)」「em(~の中に)」「com(共に)」と、接尾語の「pathy」あるいは「passion」に分解されます。接尾語の「pathy」や「passion」はどちらも不安や苦痛、苦難など苦しみを意味しています。「sympathy:シンパシー」は「辛そう」と同情を表すのに対し、「empathy:エンパシー」は「辛いね」というように、「sympathy:シンパシー」より深く感情を共にするという共感度の違いがあります。

compassion:コンパッション」は不安や苦痛に同情・感情移入するだけにとどまらず、それを取り除く行動を起こすという意味があります。日本語では「思いやり」や「慈悲」がこれに当たります。

なお、「compassion:コンパッション」の接尾語部分の「passion:パッション」は「情熱」と訳される場合が多いと思いますが、元々受け身として捉えられていた「苦しみ」を前向きな「情熱」で乗り越える、といった意味合いに移行したという説があります。キリスト教の創始者であるイエス・キリストは自ら進んで人々の「苦しみ」を一身に引き受けたので「compassion:コンパッション」の最大の実践者、すなわち救世主とされているのだと思います。

「優」という漢字の成り立ち

ここで注目したい漢字が「思いやり」や「慈悲」を一文字で表せる「優」です。「優」には能力や質の高さを示す「優秀」「優良」のほかに、「優しい」や「思いやり」という意味もあります。なぜ2つの意味をもつようになったのか、この漢字の成り立ちをもとに解説します。

「優」は人偏(にんべん)の「人」と「憂」という字が合わさって形成された漢字です。「憂いている(苦しみや不安を抱えている)人」の隣に立ち「人」が支えている状態を表しています。

「憂」は上から「頁(頭を意味する)」、「心」、「夊(とどまる足)」という字から形成され、親族を亡くし悲しみに暮れている姿が成り立ちです。そのような不安で心を痛めた人に寄り添って苦痛を和らげる能力、「優しさ」や「思いやり」がある人こそ人間の最高の能力であるとされ「優れている」という意味をもつようになったのではないかと考えられています。

古代の人は真に優れた能力とは「compassion:コンパッション」、いわゆる「思いやり」「慈悲」だと見通していたのではないかと考えます。

経験や体験がAIに優る「人」を育てる

それではなぜ「思いやり」は人間にはできて、AIには難しいのでしょうか。

AIは機械なので本当の苦しみを感じることはありません。一方、人間は自分も同じように苦しむというリアルな体験があり、感情が鏡のように共鳴するため、苦しんでいる人に「思いやり」をかけることができます。映画を見て号泣する、あるいは話している相手に共感してもらい泣きするのも、話し手の感情が鏡のように聞き手に移り共鳴しているからです。

「やせ蛙負けるな一茶これにあり」という有名な俳句があります。この句を詠んだ俳人、小林一茶は、必死に頑張っている弱者(蛙)を自分自身に照らし合わせ「私も同じだよ」と言って応援しているのです。悩み苦しんでいる人を救うには、AIが考えた最適な対処法の「正論」よりも、ただ頷くだけの「沈黙」が必要なのではないでしょうか。

このように考えると、これからは成功体験のみを積み重ねてきた強者より、数多くの挫折や不安を経験・抱えてきた弱者のほうがAIを超えるスキルを発揮していくのではないか?とも考えられます。

人間は感情によって苦悩し振り回される生き物です。人生は幸福や平穏でいられる時間より不安や苦難を抱えている時間の方が多いと思います。しかしそのような不安を抱える人を「思いやり」によって安心させられるのもまた人間なのです。

※本記事で解説する内容について、実際の言葉の成り立ちや、一般的とされる説と異なる場合がございます。

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ライター

飯田 裕康

アイザワ証券 ファイナンシャルアドバイザリー本部

飯田 裕康

1991年アイザワ証券入社。2002年まで支店のリテール営業を務め、2003年からは支店長として関西方面中心に4つの新店舗を開設。2012年の投資リサーチセンター(現市場情報部)センター長、2018年のインターネット取引部門長、2021年の投資顧問本部長、2024年の西日本ファイナンシャルアドバイザリーを経て、現在はゴールベースアプローチ推進担当を務める。

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