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ザ 語源 第29回 本当は怖い複利効果

2023.12.08 (金)

アイザワ証券 ファイナンシャルアドバイザリー本部

飯田 裕康

ザ 語源 第29回 本当は怖い複利効果

本当は怖い複利効果

「複利は人類最大の発明だ。知っている人は複利で稼ぎ、知らない人は利息を払う」とは著名な物理学者アインシュタインの言葉と言われています。

アルベルト・アインシュタイン 1879年から1955年

「複利」とは、元本から生じた金利を使用(出金)しないで元本と合算し、その元本+金利に対しさらに金利を掛け算し、これを繰り返す計算方式のことです。「単利」は元本から毎年生み出される金利を単純に足し合わせた計算方式となります。「複利」で投資を行えば「単利」より大きな成果が期待されます。

今回は「複利」の語源を明らかにすると共に「投資」を行った場合と「負債」を負った場合の両局面から「複利効果」とはどのようなものなのかを解説して参ります。

「複利」は英語で「Compound Interest:コンパウンド・インタレスト」といいます。「Compound:コンパウンド」が「複利」の「複」の部分で「Interest:インタレスト(※)」は「金利」となります。「Compound:コンパウンド」単体では「調合・複合された」、「合成された」、「複利計算の」、また「化合物」という意味になります。「複利」という日本語から「Double Interest:ダブル・インタレスト」という英訳を想像しましたが、「化合物」という意味の「Compound:コンパウンド」が「複利」となります。

ちなみに「複利」に対する「単利」は「Single Interest:シングル(単一の)インタレスト」ではなく、「Simple Interest:シンプル(簡素な)インタレスト」が正解となります。

Compound Interestの成り立ち

英語の「Compound:コンパウンド」は、「com:共に」とラテン語の「ponere:ポネーレ:置くこと」が合わさった「一緒に置くこと」が語源と考えられています。「ponere:ポネーレ」を共通の語源としている英単語は他にも、「Post:ポスト、または地位」、「deposit:ディポジット:預金」などがあります。

「複利」による投資効果はよく雪だるまに例えられます。坂道の上からから転がった雪だるまは回転するごとに加速しつつ質量が増すからです。グラフは100万円を年率5%で30年間投資した場合、複利と単利ではどの位差がでるかシミュレーションしたものです。単利は元利合計で250万円、金利部分は150万円(5%:5万円×30年=150万円)となり、同じく複利は元利合計で432万円、金利部分は332万円と単利に比べ倍に増加します。

複利と単利の比較シミュレーションのグラフ表記

「複利効果」はお金を借りる側を想定してみると話が変わります。100万円のお金を5%の金利で借り入れし、1円も返済することなく30年放置すると元利合計で負債が432万円に膨らむという恐ろしい結果になります。この事象は決して他人事ではありません。持ち家を購入する際に利用することが多い住宅ローンは「複利効果」を負担する側になる代表的な例だからです。

左右二つのグラフ(シミュレーション)をご覧ください。

元利(がんり)均等返済と元金(がんきん)均等返済のシミュレーション表示

こちらは住宅ローンなど借入金を組む際における代表的な返済方法を表したしたものです。1,000万円の借入れ、金利が5%、返済期間10年という前提で、毎月の返済額の推移と金利は総額いくら払うことになるのか、シミュレーションしてみました。左のグラフ①は元利(がんり)均等返済、右②は元金(がんきん)均等返済です。元利均等返済は毎月の返済金額が金利と元本合計で均等にする返済方法です。元金と金利の合計は毎月同金額に設定し、最初のうちは金利部分を多めに、終盤に近づくほど元金を多めに返済します。

元金均等返済は毎月の返済金額について元金の部分のみ同じ金額になるように返済する方法です。元利均等返済と同じく当初金利部分を多めに返済するプランですが、元金部分の返済金額が一定なので、元利合計の返済金額は当初多く、月を経るごとに減少していくという返済プランとなります。注目していただきたいのは双方の返済においても、金利の支払い総額が250万円を超えるという点です。

金利が5%なので単純に1,000万円×5%で元本1.000万円の元本と50万円の金利を合わせて返済すればいいという訳ではありません。なぜ金利が嵩むのかというと、10年かけて返済する過程で元本そのものが新たに金利を生み出しているからです。その点でいうと元金均等返済は少し金利負担が軽減されます。最初は返済額の負担が大きいですが、元利均等返済より少し多めに元本部分の返済が進みますので複利効果による金利の増加が幾分か抑えられる訳です。

元本自体が金利を増加させるという観点から返済期間を10年から半分の5年に短縮すれば、元利均等返済の場合で金利分の支払い総額は10年返済プランに比べ半分以下の132万円程に圧縮されます。

元本自体が金利を生み出し続けるのでなかなか返済額が減らないという実感について、筆者はもやしがたっぷり盛られた「大盛り・増えるラーメンの恐怖」を想起しました。大量のもやしが乗ったラーメンを食す場合、上部のもやしを食べているうちに下部の麺がスープを吸って膨張し、食べているのに嵩増し(かさまし)しているように見えるからです。この場合もやしから食べるのではなく、「麺(元本)」を優先して片付けるべきだったのです。

大盛り・増えるラーメンの恐怖のイラスト。ローンは元本自体が金利を生むため、なかなか減らない

複利効果についてなぜ投資する側面よりもむしろ負債を負った面から見たケースを重点的に解説したのかというと、人間の行動結果として投資が短期となり、ローンを返済する期間が長期になることが実際には多いのではないかと考えたからです。つまり投資する側はシミュレーションが絵にかいた餅となり、お金を貸す側は繰上げ返済がなければほぼシミュレーション通り複利効果を得ることが出来るのではないかということです。

「利食い千人力(せんにんりき)」という相場格言にもある通り、金融商品に投資をする場合、「早く値上がり結果を見たい」、「値上がりしたら一旦売却して利益を確保したい」というのが人間の心理だと思います。長期投資は複利効果があると頭ではわかっていても、理論通り合理的な行動を継続することは難しいのではないでしょうか。

一方で複利効果をよく理解せず、金融機関から融資された住宅ローンが35年返済だから毎月返済額は少額で済むと単純に考えている方も中にはいらっしゃると思います。返済期間が長ければ長いほど、元本から生ずる金利が膨らむという複利効果を把握することが必要であると思います。

投資は長く、借入は短くのイラスト

冒頭に記したアインシュタインの言葉は明確な証拠があるわけではありませんが、一般相対性理論はじめ数々の歴史的業績を残したアインシュタインがなぜ「複利効果」を人類最大の発明と言ったのか、この点が気になります。

この問いの回答として考えられるのが、やはりアインシュタインが残したとされる「私は天才ではありません。ただ、人より長くひとつのことと付き合ってきただけです」という言葉にあると見ています。一つの事柄に対し何年も途切れなく継続して取組むことの大切さ・偉大さをアインシュタインは強調しておきたかったのではないかと考えます。

※「インタレスト:Interest」は「ザ 語源 第11回」をご参考ください。

本記事で解説する内容について、実際の言葉の成り立ちや、一般的とされる説と異なる場合がございます。

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ライター

飯田 裕康

アイザワ証券 ファイナンシャルアドバイザリー本部

飯田 裕康

1991年アイザワ証券入社。2002年まで支店のリテール営業を務め、2003年からは支店長として関西方面中心に4つの新店舗を開設。2012年の投資リサーチセンター(現市場情報部)センター長、2018年のインターネット取引部門長、2021年の投資顧問本部長等を経て、現在は西日本ファイナンシャルアドバイザリーを担当。

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