 
					Aizawa Market Report FTSEラッセルはベトナムを新興国に格上げ
2025.10.31 (金)
 
				 
				 
					 
				FTSEラッセルはベトナムを新興国に格上げ
10月7日、英国の指数算出会社であるFTSEラッセル(以下、FTSE)は、2026年9月からベトナムの市場分類を現在の「フロンティア」から「第二新興国」に格上げすることを発表した。FTSEは、ベトナムの証券当局が市場アクセスや利便性を改善させるために尽力してきたことを評価しつつ、引き続きベトナム市場の発展過程をモニターし、2026年3月の中間レビューで関係機関からのフィードバックを参考にして、同年9月に格上げするとしている。ベトナムは2018年以降、「第二新興国」へ格上げする可能性がある市場として「ウォッチリスト」に入っていたが、当局による7年間の市場改革がようやく実を結んだ。これによって、ベトナム市場の位置付けが中国とインド、インドネシア、フィリピン、カタール等に並ぶことになる。
FTSEの市場分類は、市場アクセスや利便性、高度な規制等を基準に、定性面・定量面に基づいて評価される。ベトナムは市場規模や流動性などの定量基準をクリアしていたものの、「Settlement Cycle(決済サイクル、DvP)」と「Settlement – costs associated with failed trades(取引失敗に関連する取引コスト)」の二つの定性基準を満たしておらず、格上げは見送られてきた。
2024年11月、ベトナムは外国機関投資家に対してNPF(Non Pre-funding)モデルを導入し、現地の証券会社の責任で外国機関投資家の証券購入資金の提供・支援を認め、株式買付時の前受(事前入金)制を事実上撤廃した。また取引失敗(フェイル)に対する事後処理プロセスやインフラを整備することで、決済プロセスの透明化を進めた。これによりFTSEは、ベトナム市場がFTSEの分類フレームワークにおいて「第二新興国」としてのすべての基準を満たすと判断した。
FTSEは、今回の格上げによってFTSE Emerging IndexをベンチマークとするETFやファンドなどから最大で60億米ドルの資金がベトナムに流入する可能性があると試算している。
ホーチミン市場は格上げ発表前から活況を呈していた。VN指数はトランプ関税ショックで4月には1,100ポイントを割り込む場面もあったが、第3四半期GDP成⾧率が8%を超える堅調な経済、輸出増加と金融緩和、融資拡大等を背景に上昇してきた。これらに加えて新興国への格上げが決定したことで、VN指数は10月14日に1,800ポイントに迫った。10月28日時点では年初来で33%の上昇と、2025年に東南アジアで最も上昇している市場となっている。しかし、10月20日には銀行や不動産を巡る資金の不正流用や元本及び利息の支払い遅延問題などが悪材料視され、VN指数の1日の下落幅が過去最大(94.8ポイント安)をつけるなど乱高下する場面もあった。ベトナムは市場参加者の8割程度を国内の個人投資家が占めており、多くは信用取引を行っている。ネガティブなニュースにマージンコール(追加証拠金)回避のためのロスカットが一層の売りを呼び、一方的に売られるという市場のもろさが露呈した形だ。
証券当局は引き続き、日計り売買や空売りの解禁による利便性の向上、市場インフラの整備、英語による情報開示等、海外からの資金を呼び込むための市場改革を進めるだろう。そうした改革で市場の信頼性や透明性が向上し、国内外の投資家が安心して参入できる市場へと成熟していくことを期待したい。
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