新NISAの「成長投資枠」とは?特徴と活用のポイントを解説
2023.07.14 (金)
2024年から始まる新NISAの「成長投資枠」とは何かについて、特徴や活用のポイントを「つみたて投資枠」と合わせて解説していきます。
まずはおさらい!新NISA制度とは?
2024年から、NISA制度が大きく変わります。主な変更点は以下の4点です。
①非課税保有期間の無期限化および口座開設可能期間の恒久化
現行制度ではつみたてNISAの非課税保有期間が最長20年間、一般NISAでは最長5年間でした。新制度では非課税保有期間が無期限化されることで、投資した有価証券は売却しない限り恒久的に非課税の状態が継続します。ロールオーバー等の手続きが必要なく、より長期的な目線で資産形成が行えるようになります。
また、現行制度ではNISAの口座開設可能期間が設定されていましたが、新制度では口座開設可能期間を設けず制度が恒久化されることも決まりました。
②成長投資枠とつみたて投資枠の併用が可能:一般NISAとつみたてNISAが一本化
現行制度では一般NISAとつみたてNISAで分離しており、1年間にどちらか一つしか選択できませんでしたが、新制度では「成長投資枠」と「つみたて投資枠」2種類の投資枠を併用して利用できるようになります。
③年間投資上限額の引き上げ
現行制度の年間投資上限額は一般NISAを選択した場合120万円、つみたてNISAを選択した場合40万円でした。新制度の年間投資上限額は成長投資枠が240万円、つみたて投資枠は120万円、これらの併用が可能になることから年間の合計投資上限額は360万円になります。
従来と比較し、年間の投資上限額が大幅に引き上げられます。成長投資枠の年間投資上限額は倍増しているため一般NISAで買うことができなかった値嵩株の買付や個別株の分散投資もしやすくなります。
④生涯投資枠の拡大:投資枠の再利用が可能
現行制度では、年間投資上限額(一般NISA:120万円、つみたてNISA:40万円)×非課税保有期間(一般NISA:5年、つみたてNISA:20年)で生涯の非課税上限枠が決まりましたが、新制度では1,800万円の生涯投資枠(非課税保有限度額)で非課税で保有して運用し続けることができる上限が設けられています。
このうち成長投資枠の非課税保有限度額は1,200万円です。この非課税保有限度額については買付け残高(簿価)で管理され、商品を売却した場合には当該商品の簿価分の非課税枠を翌年に再利用できることになります。現行制度では商品を売却した分の投資枠が復活することはありませんでしたが、新制度では売却すれば生涯投資枠を再利用できます。ただし、売却した分の投資枠が復活するのは売却した翌年なので、デイトレードなどの短期売買を日々繰り返すことはできません。
詳しくはこちら ☞ 【2024年から始まる新NISA】NISA改正のポイントを分かりやすく解説
「成長投資枠」とは?つみたて投資枠との違い
成長投資枠とつみたて投資枠の主な違いは投資できる商品が異なる点です。成長投資枠は現行の一般NISAの役割を引き継ぎ、上場株式(日本株・外国株)やETF(上場投資信託)・投資信託などに幅広く投資ができるものです。
ただし、これまでは買付可能であった上場廃止のおそれがある監理銘柄や上場廃止が決まっている整理銘柄、信託期間が20年未満の投資信託、毎月分配型の投資信託及び高レバレッジ取引を用いた投資信託などは除外されます。成長投資枠で購入できる投資信託については、2023年12月まで毎月1回、投信協会のホームページに順次追加・公表される予定です。
また、つみたて投資枠は現行のつみたてNISAと同様につみたてNISA対象銘柄(長期・積立・分散投資に適した一定の投資信託)に投資ができます。新制度の生涯投資枠は1,800万円、そのうち1,200万円は成長投資枠となりますが、つみたて投資枠で購入できる投資信託は成長投資枠で購入することもできるため、1,800万円すべてをつみたてNISA対象銘柄に投資することも可能です。
一方で、つみたて投資枠より成長投資枠の方が投資できる商品の幅は広く上場株式やETFなどにも投資できるため、自身の投資戦略に合わせてうまく使い分ける必要があります。
外国株は買えるのか?
新制度の成長投資枠は、現行の一般NISAと同様に外国株への投資も可能です。ただし、証券会社によって外国株の取扱いや外国株NISAへの対応が異なるため、NISAで外国株を買いたい場合は事前に外国株の取扱いを確認する必要があります。また、整理銘柄や監理銘柄が除外されているため、日本株と同様にこれらの銘柄には投資できない点、米国のレバレッジ型ETFは高レバレッジ取引を用いた投資信託の一種として、投資ができない可能性がある点にも注意が必要です。
外国株のなかでも、GAFAMをはじめとした世界を代表する企業が多い米国株では、年4回といった連続増配を行っている企業が多いのも特徴です。また、ベトナム・香港・シンガポール・マレーシアなどのアジア株式には租税条約により、現地での配当金を非課税で受け取れる国があります。
アイザワ証券で買える外国株NISAの市場はこちら ☞ 外国株NISA動画(※外部リンク、YouTubeに遷移します)
つみたて投資枠とは
つみたて投資枠は前述のとおり現行のつみたてNISA対象銘柄に投資ができます。資産形成をこれから行う場合、まず優先したいのがこのつみたて投資枠です。コア資産となるつみたて投資を行い資産の土台を作ることが重要となります。
新制度の生涯投資枠1,800万円をつみたて投資で全て埋めていくことも可能です。例えば、毎月5万円のつみたて投資を続ければ30年で1,800万円の生涯投資枠を消化することになりますし、毎月10万円のつみたて投資を続ければ15年で1,800万円の生涯投資枠を消化することになります。また、余裕資金がある人はつみたて投資と並行して成長投資枠を活用することも検討するとよいでしょう。
「成長投資枠」活用のポイントは?
成長投資枠をすべてつみたて投資に回すこともできる一方、新制度では2つの投資枠が併用可能なことから2つの投資枠をどのように運用していくかが新NISA活用のポイントになります。成長投資枠ではつみたて投資枠では購入できない上場株式、ETF、投資信託(つみたてNISA対象外商品)の一括投資も可能です。
新NISAを活用するにあたって、コア・サテライト戦略を意識してみるとよいでしょう。コア・サテライト戦略は、資産全体をコア資産(守りの資産)とサテライト資産(攻めの資産)の2つに分けて運用する投資の戦略です。コア資産は中長期目線で安定運用が期待できる商品で運用し、サテライト資産はリスクを取り、攻めの姿勢で資産価値を増やす運用を目指します。一般的にコア資産は資産全体の70~90%、サテライト資産は10~30%を目安に運用します。コア資産となるつみたて投資の運用方針が決まれば、サテライト資産の積極運用を検討し成長が期待できる先に投資するのも選択肢の一つです。自身の資金状況やリスク許容度に応じて、うまく併用しましょう。
まとめ
2024年から始まる新NISAは「①非課税保有期間の無期限化、②成長投資枠とつみたて投資枠の併用が可能、③年間投資上限額の引き上げ、④生涯投資枠の拡大:投資枠の再利用が可能」といった変更で大きく使い勝手がよくなりそうです。より長期的な目線で、つみたて投資枠600万円、成長投資枠1,200万円をどういった商品にどれくらいの期間で投資するのか今のうちから考えておきましょう。
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