コリアインサイト ヒューマノイドロボット、鍵はアクチュエータ中心の部品
2025.12.23 (火)
ヒューマノイドロボット、鍵はアクチュエータ中心の部品
ロボット産業は、再び大きな転換点を迎えています。これまで幾度となく期待と失望を繰り返してきたヒューマノイドロボットは、いまや「概念実証」の段階を越え、「量産」と「商用化」という現実的な段階に入りつつあります。特に2025〜2026年にかけて、ヒューマノイドロボットは研究室を離れ、産業現場や日常空間へ本格的に進出する可能性が高いといえます。この変化の中心にあるのは、人工知能(AI)と同等に重要なハードウェアの中核部品であるアクチュエータです。
近年のロボット産業の動向を示すキーワードは明確です。「ヒューマノイド」「フィジカルAI」「ロボットハンド」そして「アクチュエータ」です。単純作業を担ってきた従来の産業用ロボットとは異なり、次世代ロボットには人間のような形で移動し、物体を操作し、環境に柔軟に適応する能力が求められます。その際、ロボットの「力」「速度」「精度」「しなやかさ」を同時に決定づける要素が、まさにアクチュエータなのです。言い換えれば、アクチュエータはロボットの関節であり筋肉であり、動作の質を左右する“鍵”だといえます。
特にヒューマノイドロボットにおいて、アクチュエータの重要性は飛躍的に高まります。歩行、腕や手の操作、バランス維持、繊細な力制御など、すべてが関節単位での高精度な駆動を前提としているからです。
最近では世界の先行企業を中心に、従来の産業用モータの単純な小型化段階を越え、モータ・減速機・エンコーダ・制御系を一体化した高集積アクチュエータモジュールを自社設計する動きが加速しています。これは性能向上だけでなく、量産対応やコスト低減といった商用化の課題を同時に解決するための方法でもあります。
こうした変化は、自動車産業との連続性からも明確に読み取れます。ロボット用アクチュエータは、構造的に電気自動車(EV)の駆動系や電動パワーステアリング(EPS)と技術的な共通点を多く持っています。そのため、現代モービス(韓国:012330)やインド社のシェフラー、日本企業である日本精工(NSK)やニデックといったグローバルな自動車部品メーカーが、相次いでロボット用アクチュエータ市場へ参入しています。
現代自動車グループの現代モービスはロボット系列である米ボストン・ダイナミクスにアクチュエータを独占で供給しています。また、電気自動車やロボタクシー、ロボティックスなどの部品ポートフォリオの大部分を占めています。現代モービスはアクチュエータ及び駆動モータの分野で高度な技術水準を有しているため、これらに関連する注文や部品供給は増加すると予想されています。
(資料:現代モービス、有進投資証券)
ここで注目すべきは、ヒューマノイド競争の本質が単に「AIがどれほど賢いか」という問題ではないという点です。AIがいくら高度化しても、それを現実世界で実行する物理的な装置がなければ、ロボットは動くことができません。近年公開されているヒューマノイドの第2世代・第3世代モデルでは、共通してアクチュエータのトルク密度向上、応答速度の改善、耐久性の強化に重点が置かれています。これは、ロボット産業がすでに「見せるためのデモンストレーション」の段階を越え、実際の作業投入や長時間運用を前提とした技術競争に入ったことを意味しています。
ヒューマノイドの商用化が進むにつれて、アクチュエータを中心とする部品を巡る技術格差は、そのまま産業競争力の差として表れると考えています。
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