ゼロから学べるアイザワ投資大学

会員登録(無料)

記事検索

国内

データセクション(3905) 新たな成長フェーズ入り?で株価急上昇 懸念はあれど夢もある

2025.09.16 (火)

日本株情報部長

河賀 宏明

データセクション(3905) 新たな成長フェーズ入り?で株価急上昇 懸念はあれど夢もある

東京証券取引所グロース市場に上場するデータセクション(3905)の注目度が高まっています。
データセクションの株価は2025年の年初の700円程度から7月に4320円(上場来高値:2025年9月5日時点)まで上昇しました。なぜ株価がこれほどの上昇になったのか、その要因をみていきたいと思います。

【データセクションの日足チャート(~2025年9月3日まで)】

新たな成長フェーズへ

データセクションは、カメラ使った小売店支援事業を展開しています。導入店舗数およびカメラ設置台数累計(連結ベース)は緩やかに増加していたものの、業績不振が続き、23.3期、24.3期は最終赤字となっていました。
このような状況であったため、データセクションはAIデータセンター事業を立ち上げ、業態転換を図るとしました。25.3期も最終赤字でしたが、「新規事業であるAIデータセンター事業向け先行投資費用などが要因」としており、赤字ではありましたが、今後の展開に期待できる内容でした。

AIデータセンター事業の動き(2024年)

データセクションのAIデータセンター事業の動きは2024年から本格化してきました。時系列に確認してきます。

2024年4月9日

AIやデータ領域のいっそうの発展をめざし、先端AIデータイノベーション研究所を設立したと発表。同研究所を通じて、成長ドライバーとなるビジネスシーズの発掘などを行うとしました。

2024年4月12日

Super Micro Computerとの間で業務提携を行うことを決定し、業務提携に向けた基本合意書を締結したと発表。業務提携の開始に向け、AIサーバー分野におけるR&D、AIデータセンターの運営などを中心に協議を進めているとしました。

2024年8月19日

Solaria Energiay Medio Ambiente(スペイン、以下Solaria)との協業に合意し、Solariaの工場跡地にAIデータセンターを構築すると発表。両社は今後、欧州の他の地域においても、最先端のAIデータセンターの建設と運用を進めていくとしました。

2024年10月7日

データセンター設計・建設の実績・ノウハウを持つ信越科学産業(長野県長野市)と、AIデータセンターの設計、調達、建設および運営に関するEPC(Engineering Procurement and Construction)の業務提携に関する基本合意を締結すると発表。

2024年11月15日

エレクトロニクス製造サービス(EMS)を提供している台湾有数の企業で、サーバー、ブレードサーバー、ネットワークスイッチ、ストレージ、サーバーマネジメントなどの設計・製造・サービスを手掛けるInventecと業務提携に向けた協議に入ることを決定し、基本合意書を締結したと発表。

2024年11月21日

ノートパソコンやクラウド向けサーバーなどの電子機器における受託製造サービス(EMS)大手であるWistron Corporation(台湾)と、業務提携に向けた基本合意書を締結。
両社の技術、製品、リソースおよびネットワークを活用し、今後も需要拡大が見込まれるAIサーバー分野における最先端のエヌビディア社製GPUを搭載したサーバーの確保、およびAIデータセンターの運営などにおける協業を目的とするとのことです。

2024年12月2日

台湾有数のITハードウェア製品メーカーで、ハイパフォーマンスコンピューティングならびにワークステーション製品において業界をけん引するGIGA Computing Technologyとの業務提携に向けた協議に入る旨を決定し、基本合意書を締結したと発表。
両社の技術、製品、リソースおよびネットワークを活用し、今後も需要拡大が見込まれるAIサーバー分野における最先端のエヌビディア社製GPUを搭載したサーバーの確保、およびAIデータセンターの運営などにおける協業を目的にするとのことです。

2024年12月23日

ノートパソコンやクラウド向けサーバー等の電子機器における受託製造サービス(EMS)大手であるQuanta Computer(台湾桃園市)との業務提携に向けた協議に入る旨を決定し、Quanta Computerとの間で基本合意書を締結したと発表。

業務提携に向けて、AIサーバー分野における最先端のNVIDIA製GPUを搭載したサーバーの確保、およびAIデータセンターの運営などを中心に協議を進めており、業務提携の具体的な内容などの詳細については、今後の協議を踏まえ決定次第、適切に開示するとしています。

AIデータセンター事業の動き(2025年)

2025年に入り、AIデータセンター事業の立ち上げが本格化します。

2025年2月6日

米エヌビディア認定のAIパートナとしてAIクラウド基盤などの高い技術力を有するCUDO Ventures(英国ロンドン)と業務提携すると発表。両社のAIデータセンター事業の一体化を進め、AIデータセンターの潜在的なプロジェクトに対して共同参画するとしています。

2025年6月3日

2月に業務提携していたCUDO Ventures(以下、CUDO)と資本提携(子会社化)すること、およびCUDOとの合弁会社を設立することに基本合意したと発表。

今回、同社が業務提携先である台湾サーバー機器サプライヤー各社を通じて確保するNVIDIA製GPUをCUDOがサービス提供用に調達するには、CUDOが同社の子会社であることが前提条件となっていることから、連携によるシナジーの最大化なども踏まえ、資本提携に合意したとしています。

2025年7月4日

NVIDIA B200 GPU(5000個)搭載サーバー(625台)の調達に成功し、潜在顧客である世界最大規模のクラウドサービスプロバイダーからの要請に基づき、100ExaFLOPS(エクサフロップス)を超える計算性能(FP4)を提供する日本初となる最先端かつアジア最大級のAIスーパークラスターを大阪府内に構築すると発表。

なお、取得金額は2億7200万米ドルで、1米ドルを144.01円にて円換算した金額は392億1000万円となります。取得にかかる資金は、AIデータセンター顧客からの前受金(48億7200万円)および借入金(343億3800万円)を充当予定としています。

2025年7月10日

業務提携先であるナウナウジャパン(東京都中央区)を通じて、間接的に、世界最大規模のクラウドサービスプロバイダーである顧客との間で、AIデータセンターサービスにかかる大口の利用契約を締結したと発表。
契約金額は年間1億3534万2000米ドル、売り上げは2025年9月から期間按分計上する予定。同件顧客の意向かつ守秘義務により、同件顧客の企業情報は非開示としています。

このようにNVIDIA B200 GPUを調達し、AIデータセンターサービスにかかる大口の利用契約を締結したことで、AIデータセンター事業への期待が大きく高まりました。
株価はNVIDIA B200 GPUの調達の発表から上昇が続き、AIデータセンターサービスにかかる大口の利用契約の締結を受け翌営業日に4320円の上場来高値(2025年9月5日時点)をつけました。

注目点:AIデータセンター事業の収益計上とその他案件

データセクションは8月14日に同社のAIデータセンターに「NVIDIA B200搭載 GPUサーバー」第一陣が到着したと発表しました。この時点から最先端AIスーパークラスターの構築を進めているはずです。

2025年7月10日に発表された大口案件「プロジェクトA(B200 5000個)」の売り上げが2025年9月から期間按分計上される見込みです。しっかりと売り上げが計上されるか11月に発表されるであろう26.3期中間決算は大注目となります。

また、データセクションではさらなる大型案件である「プロジェクトB(B200 1万個)」の契約を協議中。また「プロジェクトC(B200 2万~4万個規模)」などの案件に取り組んでいるとしています。
決算説明会資料には、「グローバルでのおう盛な需要を受け、年度内に、国内外で複数案件を同時に進め、今期中に業界における圧倒的な競争優位性を確立していく」と記載されていますので、今後のさらなる案件獲得、さらなる成長が期待されます。

懸念点:希薄化と利益率

2025年7月4日に発表したNVIDIA B200 GPU(5000個)搭載サーバー(625台)の調達の資金については、AIデータセンター顧客からの前受金(48億7200万円)および借入金(343億3800万円)を充当予定としていました。

しかし、8月12日に新株予約権に係る発行登録を行うと発表。発行予定期間は2025年8月20日から26年8月19日まで。資金調達の予定金額は上限780億円。調達資金はAIデータセンター事業における設備投資資金および運転資金などに充当する予定としています。
今後実際の発行段階で詳細が決定されますが、行使価額次第では発行済み株式総数が倍になる可能性があります。そうなるとAIデータセンター事業で大幅な利益を上げても、希薄化の影響により意外と株価は上がらないということになりかねません。

今後、協議中の案件(プロジェクトBやプロジェクトC)についても契約締結となれば、収益拡大期待は高まります。一方で、資金調達もセットになると思います。今後も希薄化懸念は消えませんので、注意が必要です。
「AIデータセンター事業が業績をけん引し大幅な増益となる」というシナリオですが、現時点ではまだ絵に描いた餅です。昨今では様々なコストが上昇しており、コストが当初想定を上回ったという話をよく聞きます。会社の想定する利益、そして利益率について楽観視しすぎるのは避けたほうがよいと思います。今後の四半期ごとの決算をしっかりと確認し、売り上げ・利益が会社の想定通りとなるかをしっかりとチェックする必要があると感じます。

最後に

データセクションは株価の変動率が高く、さらに出来高も多いので、デイトレードを狙っている投資家も多いと思います。ハイリスクハイリターンですので、投資初心者が下手に手を出すとやけどしかねません。投資するならタイミングを見計らうべきです。
26.3期中間決算におけて「プロジェクトA」の収益計上が確認できたタイミング、26.3期通期の営業黒字転換が確実視されたタイミング、「プロジェクトB」の契約締結を確認できたタイミングなど、購入するにしても無理はせず、リスクを抑えられるタイミングを狙うことをお勧めします。

(追記)新株予約権の発行を発表

同社は9月10日、投資会社のFirst Plus(シンガポール)を割当先とする第三者割り当てによる第23回新株予約権(行使価額固定型)の発行、および定款の一部変更を発表しました。

割当日は10月17日。発行数は44万個(潜在株式数4400万株)。行使価額は1250円。差引手取概算額として547億7000万円を調達し、AIデータセンター事業における設備投資資金および運転資金などに充当するとのことです。発行済み株式総数に対する希薄化率は最大で199.07%。行使価額が1250円と低いことから、希薄化がかなり大きくなってしまっています。

同新株予約権の発行は、10月17日開催予定の臨時株主総会において、発行可能株式総数の増加に係る定款変更に関する議案が承認されること、および同新株予約権の発行に関する議案が特別決議により承認されることなどが条件となっています。

記事提供:DZHフィナンシャルリサーチ「いまから投資」(https://imakara.traders.co.jp/

ご留意事項

金融商品等の取引に関するリスクおよび留意点等

お客様にご負担いただく手数料について

免責事項

本資料は証券投資の参考となる情報の提供を目的としたものです。投資に関する最終決定は、お客様ご自身による判断でお決めください。本資料は企業取材等に基づき作成していますが、その正確性・完全性を全面的に保証するものではありません。結論は作成時点での執筆者による予測・判断の集約であり、その後の状況変化に応じて予告なく変更することがあります。このレポートの権利は弊社に帰属しており、いかなる目的であれ、無断で複製または転送等を行わないようにお願いいたします。

ライター

河賀 宏明

日本株情報部長

河賀 宏明

証券会社、事業会社におけるIR担当・経営情報担当、FPや証券アナリスト講師などを経て2016年に入社。 金融全般に精通。証券アナリスト資格保有。 「トレーダーズ・ウェブ」向けなどに、個別株を中心としたニュース配信を担当。 メディア掲載&出演歴 株主手帳、日経CNBC「朝エクスプレス」、日経マネー

合わせて読みたい

このカテゴリの他の記事

国内 上場廃止株は持ち続けるべきか?保有株の売却方法について解説

上場廃止株は持ち続けるべきか?保有株の売却方法について解説

2025.01.15 (水)

国内 マーケットのミカタ 次期日銀総裁の課題と見通し

マーケットのミカタ 次期日銀総裁の課題と見通し

2023.02.15 (水)

国内 日本株マーケットレポート 日経平均は大幅下落 NYダウは大幅高で終える

日本株マーケットレポート 日経平均は大幅下落 NYダウは大幅高で終える

2022.09.29 (木)

国内 日本株マーケットレポート 日経平均は2営業日続伸 米は雇用統計を控え様子見

日本株マーケットレポート 日経平均は2営業日続伸 米は雇用統計を控え様子見

2022.08.05 (金)

人気記事

アイザワ証券公式SNSアカウント