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【米国株】S&P500新規採用銘柄(後編):クラウドストライクは採用後に大事件

2024.10.22 (火)

中国株情報部

島野 敬之

【米国株】S&P500新規採用銘柄(後編):クラウドストライクは採用後に大事件

S&P500は米国の主要産業を代表する500社で構成される株価指数です。米国株式市場の時価総額の約80%をカバーしています。
構成銘柄に採用されるには米国企業であることが前提で、それは米国内での売上高や固定資産、本社所在地などで判断されます。このほかの要件は◇過去4四半期の純損益の合計が黒字で、直近の四半期の純損益が黒字◇流動性比率の高さ(過去6カ月間の月間売買高が最低25万株)◇浮動株比率が50%以上◇時価総額が180億ドル以上◇新規株式公開(IPO)から12カ月以上経過(構成銘柄からスピンオフした銘柄はその限りではありません)◇グローバル産業分類標準(GICS)の分類に基づく産業バランスが適切――などです。

今回は2024年6-9月に晴れてS&P500に採用された銘柄のうちクラウドストライク・ホールディングス(CRWD)、デル・テクノロジーズ(DELL)、ゴーダディ(GDDY)の3銘柄をご紹介します。

クラウドストライク、サイバーセキュリティー提供

クラウドストライク・ホールディングスはサイバーセキュリティー事業を手掛けています。創業は2011年で、「クラウド時代のサイバーセキュリティー」を標榜し、人工知能(AI)を主体に構築された「真のクラウドネイティブプラットフォーム」と称するファルコン(Falcon)を展開しています。

ファルコンは、サイバーセキュリティーを統合するプラットフォームとして設計されています。マルウエア(コンピュターウイルスやワームなどの悪意あるプログラム)やゼロディ攻撃(脆弱性への対策を取る前に行うサイバー攻撃)、認証情報の盗難といったサイバー攻撃に対応します。次世代アンチウイルスをはじめ、エンドポイントでの検知と対応(EDR)、脅威の防止や検知に利用できる情報を収集・分析するサイバー脅威インテリジェンス、システムやネットワークなどを探索して脅威の兆候を発見した上で対処する脅威ハンティングなどの機能を持ちます。

このうちEDRは、パソコンやサーバーなど通信ネットワークの末端に接続されたデバイス(エンドポイント=Endpoint)でサイバー攻撃を検知(Detection)し、被害の拡大を食い止める対応(Response)をするEDR(Endpoint Detection and Response)ソリューションのことです。
一方、継続的に資産の脅威を把握し、重要度に応じて対処する優先順位を決める機能として、不正なシステムやアプリケーションを特定してリアルタイムで監視する「ファルコン・ディスカバー」、脆弱性管理の「ファルコン・スポットライト」、攻撃者に焦点を当てた外部攻撃対象領域管理の「ファルコン・サーフェス」などがあります。

クラウドストライクは2024年6月24日にS&P500の構成銘柄になりましたが、それから1カ月もしない7月19日に大事件が起きました。マイクロソフトの基本ソフト(OS)で発生した大規模なシステム障害で、世界の空港で遅延が発生する事態となったのです。

システム障害の原因はファルコンの一部にあった不具合です。クラウドストライクは原因の特定や復旧対策を進めましたが、株価は暴落しました。ただ、7月末に底を打つと、その後は不安定ながら戻り歩調にあるようです。

業績は2024年5-7月期まで前年同期比で23四半期連続の増収と着実に売上高を伸ばしています。純損益は2023年2-4月期に初めて黒字に転換すると、その後は6四半期連続で黒字を維持しており、S&P500の採用要件をクリアしています。

デル・テクノロジーズ、世界3位のパソコンメーカー

デル・テクノロジーズは、パソコンを軸とするIT機器とITインフラのソリューションの提供を手掛けています。調査会社のガートナー(IT)によると、パソコンの出荷台数ベースの世界シェアではレノボグループとHP(HPQ)に次ぐ3位で、2024年4-6月の市場シェアは16.7%に達しています。
パソコンとディスプレー、キーボード、ヘッドセットなどの周辺機器で構成するクライアント・ソリューション部門が中核事業の一角です。2024年1月期決算ではこの部門の売上高が16.0%減の489億1600万ドル、営業利益が8.2%減の35億1200万ドルで、全体に占める割合はそれぞれ55.3%、45.0%でした。
この部門では法人向けにパソコンや周辺機器を提供するビジネスが主力です。売上比率は法人向けが全体の81.4%、消費者向けが18.6%となっています。

一方、インフラ・ソリューション部門は2024年1月期の売上高が11.7%減の338億8500万ドル、営業利益が15.0%減の42億8600万ドルです。全体に占める割合はそれぞれ38.3%、55.0%で、売上高の割に営業利益が大きいという特徴があります。営業利益率は12.6%とクライアント・ソリューション部門の7.2%を大幅に上回っています。

インフラ・ソリューション部門は顧客のデジタルトランスフォーメーション(DX)を支援します。AIを通じて適正化されたサーバーをはじめ、ストレージ機器、仮想化されたソフトウエア・ソリューションなどを提供し、ITシステムの運用の簡素化、合理化、自動化を推進しています。

ゴーダディ、ドメイン管理で世界最大級

ゴーダディはウェブサイトのドメイン管理やウェブホスティングといったサービスを手掛けています。ドメイン登録の管理では世界最大級で、2023年末時点で約8500万件のドメインを管理しています。2023年末のドメイン登録数は世界全体で3億6000万件に達しており、全体の約24%を占める計算です。

事業はコア・プラットフォーム部門とアプリケーション&コマース部門に分かれています。コア・プラットフォーム部門は文字通り中核事業で、ドメインの登録・更新、ドメイン販売のアフターサービス、ウェブホスティングなどで構成されます。2023年12月期の売上高は前年比0.4%増の28億2400万ドル、EBITDA(利払い・税引き・減価償却前利益)が4.2%増の8億1600万ドルで、全体に占める割合はそれぞれ66.4%、57.9%です。
アプリケーション&コマース部門は、ソフトウエア製品、オンラインストアの運営に使うコマース製品、メール関連製品などで構成されます。特にウェブサイトの作成やオンラインストアの立ち上げなどに使う「Websites + Marketing」などのソフトウエアに強みを持ちます。また、世界中でウェブサイトの作成に利用されるワードプレスの使い勝手を高め、セキュリティーや自動化の機能を改善するツールも提供します。この部門の売上高は11.8%増の14億3000万ドル、EBITDAが13.7%増の5億9400万ドルで、全体に占める割合はそれぞれ33.6%、42.1%です。

ゴーダディの顧客ベースは2000万超と膨大で、最大の顧客層はビジネスも手掛ける個人です。次いで数が多いのがWebデザイナーやデベロッパーといったウェブ制作のプロフェッショナルで、3番目はドメイン登録者やドメイン投資家です。

記事提供:DZHフィナンシャルリサーチ「いまから投資」(https://imakara.traders.co.jp/

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ライター

島野 敬之

中国株情報部

島野 敬之

出版社を経て、アジアの経済・政治情報の配信会社に勤務。約10年にわたりアジア各国に駐在。 中国株二季報の編集のほか、個別銘柄のレポート執筆を担当する

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