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米国株の配当は二重課税って本当?確定申告は必要なのか。2024年の税制改正も

2023.12.26 (火)

ファイナンシャル・プランナー/ライター

田中 あさみ

米国株の配当は二重課税って本当?確定申告は必要なのか。2024年の税制改正も

米国株を購入し、配当がある株は一定の時期に配当金が口座に入ります。しかし、特定口座の源泉徴収ありを選択している場合は日本とアメリカで二重課税された後の金額となっています。

日米祖米条約では、米国株の配当所得に対して10%徴収されることが定められています。それに加えてさらに日本の税金20.315%が課税され徴収されています。

二重課税された税額は、確定申告で「外国税額控除」を申請することで一部が還付されます。

今回は米国株の配当金に対する二重課税、確定申告で戻ってくるお金と注意点について解説していきます。

米国株の配当金は二重課税されているって本当?

株式投資では配当金と売却による譲渡益が課税対象となります。

日本に住んでいる人は多くの場合、所得が生じた場所が外国であっても所得に対して税金が課され申告する義務があります。日本とアメリカは「日米租税条約」を結んでおり、配当所得については一律10%と定められています。

米国株は特定口座で「源泉徴収あり」の場合、アメリカの配当所得として10%引かれた後に日本では20.315%の所得税・復興特別所得税・住民税の合計が源泉徴収されます。

米国株の配当を「特定口座・源泉徴収あり」で受け取っている人は、アメリカ・日本で二重課税されていることになります。

例えば米国株で200,000円の配当を受け取った場合は、国内の納税額と源泉徴収される税額は以下のとおりです。

国内の納税額(日本のみ)

200,000円×20.315%=40,630円

特定口座・源泉徴収ありで徴収される税額

200,000円×10%=20,000円(アメリカ)

200,000円×20.315%=40,630円(日本)

合計60,630円

配当金を多くもらえばもらうほど、徴収される二重課税の金額は大きくなります。

確定申告で二重課税された税額が還付される

上記の二重課税は、確定申告で「外国税額控除」を申請することで余分に納めた税金が還付されます。

外国税額控除とは以下の式で計算した控除限度額を限度として、外国所得税額を年間の所得税額から差し引く制度です。

(1)所得税の控除限度額=年間の所得税額※1×(年間の調整国外所得金額※2/年間の所得総額※3)

(2)復興特別所得税の控除限度額=年間の復興特別所得税額※4×(年間の調整国外所得金額/年間の所得総額)

※1:年間の所得税額とは、配当控除や住宅ローン控除などの税額控除を適用した後の所得税額です。

※2:年間の調整国外所得金額とは、純損失または雑損失の繰越控除や上場株式などに係る譲渡損失の繰越控除などの各種繰越控除の適用を受けている場合には、適用前の年間における国外所得金額をいいます。ただし、国外所得金額が年間の所得総額に相当する金額を超える場合は、年間の所得総額に相当する金額となります。

※3:年間の所得総額とは、上場株式などに係る譲渡損失の繰越控除など各種繰越控除の適用を受けている場合には適用前の総所得金額です。

※4:年間の復興特別所得税額とは、基準所得税額(所得税額)に2.1%の税率を乗かけて計算した金額です。

計算式を見ると控除限度額は自分の年間の所得税に「所得総額のうち調整国外所得金額」の割合を乗じたものですので、アメリカの税金10%が全て戻ってくるわけではありません。

他にも確定申告で外国税額控除をする際には、以下の注意点があります。

確定申告をする際の注意点

米国株で利益を得て、外国税額控除などの確定申告をする方は以下の4点に注意しましょう。

1.配当控除は適用されない

米国株は配当控除の対象外ですので、日本株のように配当控除を受けることはできません。

配当控除の対象は「確定申告において総合課税の適用を受けた配当所得」とされています。

2.申告することで負担が重くなる場合も

株式投資による利益が一定額を超えると、確定申告をすることで所得が上がり社会保険料や税金の負担が増える可能性があります。

特に配偶者の扶養内で働いている人や個人事業主は要注意です。

3.総合課税と申告分離課税の選択

配当所得を申告する場合、総合課税と申告分離課税の2つから選択できます。

総合課税は各種の所得金額を合計して所得税額を計算し、申告分離課税は他の所得金額と合計せず分離して税額を計算します。

申告分離課税で申告すると「上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除」を利用できます。

上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除とは、上場株式の取引で生じた譲渡損失がある場合に年間の「上場株式等の配当等に係る利子所得の金額および配当所得の金額」と損益通算ができる制度です。

損益通算しても控除しきれない損失の金額は、翌年以降3年間に渡って確定申告により「上場株式等に係る譲渡所得等の金額および上場株式等に係る配当所得等の金額」から繰り越して控除することができます。

取引で損失があり、損益通算・繰り越し控除がしたい方は分離課税制度を選択しましょう。

総合課税を選択すると給与所得など他の所得と合算して申告します。よって他の所得も含め課税される所得合計の所得税率が20.315%以下の場合は有利と言えます。

所得税と住民税で、総合課税と申告分離課税をそれぞれ異なる方式で選択できますが2024年の確定申告(2023年分の所得)については税制改正により選択ができなくなります。

4.税制改正により所得税と個人住民税の課税方式を一致させることに

上場株式等の配当所得や譲渡所得などについては、所得税と個人住民税において異なる課税方式の選択が可能とされてきました。

しかし2022年度の税制改正において、2024度から所得税と個人住民税の課税方式を一致させることになり異なる課税方式を選択できなくなりました。

必ずしも確定申告をする必要はない

米国株の配当金に対する二重課税と、確定申告について解説してきました。

筆者も米国株で配当金を「特定口座・源泉徴収あり」で受け取っています。個人事業主ですので確定申告で所得が上がってしまう、配当金が少額で二重課税されている金額も少ないという理由で確定申告には含めていません。

確定申告により二重に課税された金額の一部は戻ってきますが、人によっては税金・社会保険料の負担が重くなってしまいます。また確定申告には手間と時間がかかりますので、労力に見合う恩恵を享受できるかという点も検討する必要があります。

記事提供:DZHフィナンシャルリサーチ「いまから投資」(https://imakara.traders.co.jp/

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ライター

田中 あさみ

ファイナンシャル・プランナー/ライター

田中 あさみ

大学在学中に2級FP技能士の資格を取得。会社員を経て独立し、金融・投資・相続・法律などの記事を執筆している。 自身でも米国株やETF・投資信託等を運用中。

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