
ASEANトピックス ベトナムVN指数が史上最高値を更新した背景
2025.09.17 (水)




金融・不動産向けの改革・政策支援が株価の押し上げ要因に
ベトナムVN 指数は8 月27 日の取引時間中に1696.6 ポイントまで上昇し、史上最高値を更新した。同指数はホーチミン証券取引所に上場する全銘柄の時価総額加重平均型指数で、2000 年7 月28 日を基準日(100)として算出している。今回の上昇によりVN 指数は基準日に比べて約17 倍となった格好だが、VN 指数の構成ウェートで見ると全体の約45%を金融セクター(うち約9 割が銀行、1 割が証券)、約19%を不動産セクターがそれぞれ占めており、いわば金融政策と金利に敏感な景気敏感株の動向が指数全体に大きく影響する構造となっている。
VN 指数が史上最高値を更新した背景として、ベトナムの第2 四半期(4-6 月)の実質GDP 成⾧率が前年同期比+7.96%と、第1 四半期の7.05%から加速した事が挙げられる。しかし経済成⾧が加速した要因を分析すると、上記の景気敏感セクターへの政策のテコ入れ策による影響が大きい。例えば先月号の本誌でも紹介したが、ベトナム政府は今年1 月1 日から新土地法2024 を施行し、市場価格に基づく土地価格の評価・算定方式へと移行している。同法は不動産価格の透明化を意図とし、価格高騰への不満を抑制する意味合いもあったが、ベトナムの国家銀行(SBV、中央銀行に相当)によると今年6 月末時点の銀行業界の貸付け金残高は昨年末比で9.9%増の1 京7,200 兆ドン(約96 兆円)となり、そのうち不動産関連融資の残高は同2.4 倍の3,180 兆ドン(約17.7 兆円)と全体の18.5%を占め、全体的に不動産業向けの融資に偏る傾向がある。
ベトナムの大手13 行のうち、テクコムバンク(TCB)、ベトナム国際銀行(VIB)、軍隊商業銀行(MBB)、TP バンク(TPB)、サイゴンバンク(SGB、※当社取扱外)、PG バンク(PGB、※当社取扱外)の6 行は、不動産向け融資を昨年末比で3 割以上増加させており、中には同78%増となった銀行も含まれている。過去2 年余りにわたりベトナムの不動産業界はドル建て社債の返済に苦慮していたが、国内銀行勢の積極融資により息を吹き返し、今年の経済成⾧を牽引した格好となっている。銀行セクターの上場27行の上半期の税引き前利益は、前年同期比16.1%増を記録し、株価も好調に推移した。またベトナム国家銀行はベトコムバンク(VCB)、軍隊商業銀行、HD バンク(HDB)、VP バンク(VPB)の4 つの大手銀行の法定準備率を2025 年10 月1 日から50%に引き下げると通達した。ファム・ミン・チン首相は2026 年から融資上限規制を段階的に撤廃していくことに度々言及しており、銀行セクターの⾧期的な成⾧期待を高めている。
不動産向けの融資増は潜在的なリスクにもなり得る
銀行セクターの成⾧期待が高まっている反面、2025年6月末の銀行システム全体の融資残高は、ベトナムのGDPの約142%の水準に達している。前述のようにベトナムの銀行融資は不動産向けの伸び率が高く、同業界に偏っている傾向にある。ベトナム国家銀行のグエン・ティ・ホン総裁は、不動産向け融資の増加について、「法的課題の解消やプロジェクトの再始動による資金需要の高まりが背景にある」と説明し、不動産市場を後押しするための政策に沿った動きだと説明している。ただ、市場では不動産や株式への融資急増がインフレや銀行の不良債権につながると懸念する声もあり、その潜在的なリスクにも十分留意する必要があると考える。
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