Aizawa Market Report インドネシア金融市場の混乱
2026.02.25 (水)
インドネシア金融市場の混乱
2026年に入りインドネシアの金融市場が混乱している。株式市場では、ジャカルタ総合指数が1月20日に9,134ポイント(終値ベース)の史上最高値を付けたものの、1月28日から29日の二日間で8.3%急落した。その後は昨年10月以来の8,000ポイント台を割り込む場面もあった。また為替市場では、通貨ルピアが対米ドルで史上最安値近辺で推移している。中央銀行副総裁の突然の辞任と、後任候補の一人にプラボウォ大統領の甥を指名する人事案が承認されたことで、中央銀行の独立性が損なわれるなどの懸念が広まっていた。
株式市場急落の引き金となったのは、世界的な指数算出会社であるモルガン・スタンレー・キャピタル・インターナショナル社(以下MSCI)が、インドネシア証券取引所について、株主構成の不透明さや浮動株比率の低さ、作為的な相場形成など違法な売買行動の疑い等について懸念を表明したことだ。MSCIは、5月までに透明性向上に向けた改善が確認できなければ、インドネシア市場の市場分類を現在の新興国からフロンティアへ格下げすることや、指数におけるウェイトの引き下げを言及した。一部の金融機関から、格下げが起こればアクティブファンドやETFを通じた海外機関投資家の資金流出は22億~78億ドルに上るとの試算もある。
インドネシア市場には株式の新規上場(IPO)や浮動株比率、市場参加者など構造的な問題があるようだ。例えば新規上場時に企業は10%の株式を売りに出すことで上場でき、最低浮動株比率も国際基準よりはるかに低い7.5%で、上場企業の半分以上は浮動株比率が15%未満という状況である。MSCIの通達を受けて、インドネシア証券取引所は証券保管機構などの関係機関とともに、それまで5%以上保有する株主に課されていた開示義務を1%以上に引き下げること、単一投資家の識別情報のカテゴリーを9から27へ細分化すること、浮動株の最低比率を7.5%から15%に引き上げることなどの対策を打ち出し、MSCIと連携し市場の透明性や健全性の向上を図ることを発表した。
2月に入り、格付会社のムーディーズは5日、インドネシアの信用格付け見通しを「安定的」から「ネガティブ」に引き下げた。これを受けてジャカルタ総合指数は6日、2.1%下落した。ムーディーズは、政策決定プロセスの予測可能性と一貫性が低下したことで、政策リスクに対する懸念から株式と通貨のボラティリティが高まっているとし、投資の魅力度が低下し資金調達コストが上昇していると警告した。2025年に新たに設定された政府系投資ファンドである「ダナンタラ」も、投資優先順位やリスクマネジメント、監督当局との関係性など透明性に疑問が残るとしていることも、格付け見通し引き下げに影響したと思われる。
2月中旬にかけてジャカルタ総合指数は8,000ポイント台前半で推移し、やや落ち着きを取り戻したように見える。財務大臣は2月13日、今年第1四半期(1-3月)のGDP成⾧率が前年同期比+5.5~6%に達する見込みであると経済フォーラムで語った。25年第4四半期(10~12月)の成⾧率は同+5.4%、25年年間成⾧率は前年比+5.1%だった。また中央銀行は19日、5会合連続で政策金利を据え置き、通貨ルピアの安定を目指すことと規律ある金融政策を強調した。
一連の相場の混乱からインドネシア取引所のCEOをはじめ、金融当局の高官ら4人が責任をとって辞職したが、新しい経営陣には一刻も早い市場改革が待たれている。今回のMSCIの通達により、市場の透明性と信頼性に対する国際的な基準の高さをインドネシア金融当局が認識し、より多くの投資家を引き付ける魅力的な市場として機能するための改革がなされるか、注視する必要があるだろう。
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