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株式市場の視点 ウクライナ情勢

2022.03.04 (金)

アイザワ証券 投資顧問部

吉田 大路

株式市場の視点 ウクライナ情勢

ウクライナ情勢

ウクライナ情勢が引き起こす状況

ロシアの電撃的な侵攻で首都キエフなど大都市が包囲されており、戦闘状態が続き緊張は高まったままです。ウクライナの抵抗も強く停戦協議がどんな形で進められるか流動的ですが、停戦交渉がいずれ実現されることを前提に、ウクライナ情勢が国際社会や国際経済にどのような影響を与えるかが焦点になります。

外交努力による解決をあきらめたわけではありませんが、西側諸国中心にロシアの侵攻に対して制裁を強めています。この先の展開は予断を許さない状況です。

G7を中心とした世界の主要国は共同でロシアに対し強力な制裁を与えることで結束し、ロシア包囲網を強めています。EU各国や米国に日本も加わり、世界の銀行が参加する決済網の国際銀行間通信協会(SWIFT)からロシアの主要銀行を締め出し、ルーブルによる外貨の決済を困難にすることを決定しました。ルーブルは決済リスクにさらされるために下落し、足元でも8%を超えるインフレが加速してロシアの国民生活は疲弊し、不満が高まることが予想されます。ロシア側も戦争を長期化することは避けたいはずです。

ロシア軍侵攻後の株式市場

日米欧の株式市場の反応は、ウクライナリスクで大幅に下落していたこともあり大きく反発しました。

  • ウクライナ問題など不透明要因が重なりそれまでに大きく下落していたこと
  • 戦争が長期化する可能性が大きくなさそうなこと
  • 地政学的なリスクが、FRBの積極的な利上げ姿勢に影響を与える可能性もあること

などの要因が考えられます。株式需給面からは、投資家の資産配分が弱気側に傾いていたこともあり、一旦通常の資産配分に戻すための買い注文が集中して入ったことが大きいと思われます。

当面はウクライナの動向に揺さぶられる状況が続きそうで、株式市場の変動率は高い状況が続きそうです。

経済への影響

ウクライナは欧州有数の穀倉地帯であり、小麦の生産量が多く、食品価格へ影響は大きいものがあります。欧州のエネルギーはロシアからの石油・ガス輸入に頼っているため、価格上昇が懸念されます。欧州経済への影響は大きそうです。

企業活動への影響もあります。ウクライナはIT産業が盛んで、それを担うための人材が積極的に育成されているIT先進国です。日立も買収したグローバルロジック社の拠点がウクライナにあり社員を退避させています。商社もエネルギー関連の事業に参画しており影響が懸念されます。製造業でも拠点があり生産への影響が懸念されます。

経済全体へは、「欧州の景気減速」「エネルギーや食品、物流コストの上昇や高止まり」「サプライチェーンへの影響」などが懸念されます。インフレの動向次第では金融引き締め圧力が強まることで、金融引き締めが景気を金融当局の想定以上に押し下げるリスクもあり、難しい金融政策が続きそうです。

図表でみるマーケット

  • 感覚的な話になりますが、調整一巡感や最終局面感が生じない株式市場となっています。その背景を表しているのが、上昇銘柄と下落銘柄の割合を示す指標である「騰落レシオ(※)」の動きです。一般的には下落・上昇銘柄の割合が極端に傾いた時に市場の行き過ぎを示す指標として利用されます。
  • 騰落レシオは2021122日(図における丸を付けた所)に23を着けた後、上昇基調となっています。これは下落銘柄よりも上昇銘柄の方が増加していることを示します。一方、TOPIX2021122日に一旦底打ちしましたが、再び下値を切り下げる動きとなり、騰落レシオの動きと整合性が合いません。
  • マーケットの調整が下落の最終局面を示すような全面安にならず、銘柄数的には半数以下の弱含みに推移する銘柄群がマーケットを下方向に引っ張る状況となっていることが見て取れます。
  • 異なる方向から見れば、マーケット全体は弱含みだけれども、強含みで推移している銘柄が増加しつつあることになります。
  • 投資環境が混迷する状況下、マーケットの動きも通常とは異なる動きを示しています。

※騰落レシオとは、(25日間の値上がり銘柄数の合計)÷(25日間の値下がり銘柄数の合計)×100が計算式です。他の日数を使うこともありますが25日を使うことが一般的です。騰落レシオは100%が値上がり銘柄と値下がり銘柄の数が一致している中立の状態。100%を超えると値上がり銘柄のほうが多い状態を意味します。一般的には120%以上になると過熱気味、逆に、70%以下は売られすぎといわれます。

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ライター

吉田 大路

アイザワ証券 投資顧問部

吉田 大路

2015年アイザワ証券入社。現在は投資顧問部運用課に所属。当社入社以前は証券系投資信託、生保系投資顧問、信託銀行などで約30年間、資産運用業務を行ってきた。基本的にブログやSNSはやらないので、今回の業務に伴う書き込みが初めての体験。

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