今月のたけぞう氏ピックアップテーマ エネルギー基本計画から注目する原子力発電・ペロブスカイト関連銘柄
2024.11.27 (水)
日米の選挙結果は明暗が別れました。日本は自民・公明党の与党が過半数割れとなり、今後は国民民主党や日本維新の会などの賛成がない場合は法案が通過しません。米国はトランプ前大統領が圧勝し、また上院・下院も共和党が多数を占めたことで、同党シンボルカラーを表した「トリプルレッド」となりました。これにより、通常予算案や法案を成立させるには上下両院の可決が必要ですが、大統領が掲げる政策を実現しやすくなりました。
新しいエネルギー基本計画から見る『2040年度の電源構成』
経済産業省は、新しいエネルギー基本計画の焦点となっている『2040年度の電源構成』について、太陽光や風力等の再生可能エネルギーを最大の電源とするシナリオを検討していることが11月中旬にわかりました。また、原子力比率を2割とする方針も掲げており、これは2030年度の目標だった20〜22%とほぼ同水準を維持するとしています。原発の比率は2022年度の実績では5.5%にすぎず、安全が確認できた既存の原発の再稼働を進めていくとしています。
昨今、データセンターの新設や半導体工場の新設・増設に伴う電力消費の急増によって電力不足などが懸念されています。今回はそうした事を踏まえ、原子力発電関連と再生可能エネルギーからペロブスカイト関連を紹介します。
原子力発電関連
日本製鋼所(5631)
日本製鋼所は、樹脂機械製品、プラスチック成形機等を核にITや防衛など多様な製品を擁する「産業機械事業」と、発電、石油精製、天然ガス等のエネルギー産業向けを中心とする「素形材・エンジニアリング事業」の2つの柱に、社会の最先端のニーズに応えるものづくり企業です。原子力圧力容器製造で8割の世界シェアを獲得しています。
先日、北米向けで初めて小型モジュール式原子炉(SMR)部材を受注したと発表しました。SMRは安全性や経済性の面で注目を集めており、世界各国で開発が進んでいます。日本製鋼所はこの成長市場に早期参入することで、新たな収益源の確保を目指しています。
木村化工機(6378)
木村化工機は、化学プラントを主力する企業です。原子力事業においては、核燃料輸送容器や核燃料濃縮関連機器、放射性廃棄物処理装置などを製造しています。11月に2025年3月期業績予想の修正を発表し、営業利益は従来予想の13億3000万円から27億2000万円に大幅な上方修正となりました。安全審査が終結した原子力発電所の再稼働に向けた業務などを受注した事が要因としています。
日立製作所(6501)
日立製作所は、総合電機・重電トップ企業です。同社と米国ゼネラル・エレクトリック(GE)は経営資源を融合して、日立GEニュークリア・エナジーを2007年に設立しました。1950年代に原子力事業への取組みを始め、以来、純国産沸騰水型軽水炉(BWR)初号機の納入をはじめ、多くの原子力発電プロジェクト、燃料サイクルプロジェクトに携わっています。次世代小型軽水炉の日米共同開発を進めており、2028年にもカナダで初号機を建設する予定です。また、今年11月に日本政府がポーランドでの原子力発電所の建設を支援すると公表しました。同国で初となる原発の導入に向け日立製作所などの日本企業の技術を活用するとしています。
中国電力(9504)
中国電力は、中国地域全域をネットワークとして、火力・水力を中心とした発電で電気の安定供給に努めている電力会社です。先日、島根原子力発電所2号機の再稼働について、12月7日に原子炉を起動すると発表しました。2012年1月末以来、約13年ぶりの再稼働となります。2024年度(2025年3月期)に約3カ月間稼働した場合、収支改善効果は110億円と試算されています。しかし、市民団体が安全性への懸念から再稼働中止を求める申入書を提出した事も明らかになっています。
ペロブスカイト太陽電池関連
ペロブスカイト太陽電池とは、「ペロブスカイト」と呼ばれる化合物を塗布・印刷することで製造された次世代太陽電池です。低コストで製造可能、軽量で柔軟性がある、低照度でも発電できるなどの特徴があり注目されています。
積水化学工業(4204)
積水化学工業は住宅、管工機材、住宅建材や建材用の化成品、高機能プラスチックなどを中心に製造する大手樹脂加工メーカーです。同社と東京都はフィルム型ペロブスカイト太陽電池の共同研究を進めています。2024年5月下旬には東京国際クルーズターミナルへのペロブスカイト太陽電池の設置が完了し、港湾施設での検証を開始。2025年3月28日までを目途に、検証を通じて耐風圧や塩害に対する耐久性などの確認が行われます。なお、 東京都は2025年4月から新築住宅等への太陽光発電設備の設置、断熱・省エネ性能確保等を義務付ける制度を実施する予定です。
K&Oエナジーグループ(1663)
K&Oエナジーグループは、ヨウ素の年間生産量約1600トンを生産する企業です。ヨウ素はペロブスカイト太陽電池の主原料となります。日本のヨウ素の埋蔵量は世界の3分の2を占めると言われ、同社の子会社である関東天然瓦斯開発とK&Oヨウ素が持つ鉱区は、南関東ガス田の3分の1弱と膨大であり、今後ペロブスカイトが主流となれば同社にも恩恵がありそうです。
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