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アジア株

アイザワ ほっと マーケットアジア Asia Market Strategy 2023年4月

2023.04.28 (金)

アイザワ証券 市場情報部

明松 真一郎

アイザワ ほっと マーケットアジア Asia Market Strategy 2023年4月

TSMC 予想を下回る2023年4~6月期の売上高見通しを発表

4月20日、半導体の受託生産の世界最大手である台湾セミコンダクター(台湾:2330、以下「TSMC」)が2023年第1四半期の業績を発表しました。 台湾ドルベースの売上高は前年同期比4%の増収、純利益は前年同期比2%の増益と、増収増益となりました。

米ドルベースの売上高は前年同期比5%の減少となったものの、 半導体の需給見通しの不透明感により市場予想が引き下げられていた 中、それを上回る結果であったことに安堵の意見もありました。しかし、続いてTSMCが発表した第2四半期の見通しが厳しいものであったことから半導体業界の先行き不透明感がより高まることとなりました。

TSMCが発表した2023年4~6月期の売上高見通しは152億~160億米ドル (前年同期は182億米ドル )と、通期の売上高見通しについても今年1月時点からさらに引き下げました。

TSMCは先にも書いた通り、アップルやエヌビディア、クアルコム、AMDなどの名立たる企業へ製品を供給する半導体受託生産の世界最大手です。世界最大手であるTSMCの動向はその影響力から半導体業界の動向であるとも考えられており、警戒感が高まっています 。

サムスン電子の半導体部門 四半期ベースで最大の赤字を計上

4月7日に発表したサムスン電子(韓国:005930)の第1四半期決算は純利益が1兆4,000億ウォンとなり、市場予想平均の1兆4,500億ウォンを下回りました。主力である半導体メモリーの販売不振により、同部門が4兆ウォンを超える損失を計上したことが大きく影響した模様です。

また具体的な言及を避けたものの、決算発表と同時にメモリー生産量を下方修正することを発表するなど、半導体各社の苦しい状況がみられます。

業界不振により米国の工場誘致にもブレーキか?

TSMCには各国から工場誘致案件が複数舞い込みます。

我らが日本の茨城県つくば市に設けられた同社研究開発センターは日本政府の誘致によるもので、約190億円の助成金が支払われました。建設中の熊本県の工場への助成金は約5,000億円とも言われています。誘致国側は製造技術の確立や雇用創出など、企業側は工場建設に必要な多額の先行投資を補助金で賄うことが出来るなど、両社間Win-Winを目指しますがそのバランスは難しいとされています。

TSMC最大の顧客である米国もその一つです。米国の工場誘致は、対中国対応、台湾の地政学リスクを考慮したものであると考えられます。現在は、アリゾナ州で2つ目となる半導体工場の建設計画を進めており、米国半導体の国内製造を支援する「CHIPS法」の基、減税(約70億~80億ドル)と補助金(約60億~70億ドル)の受け取りを見込んでいます。

しかし米政府が補助金受給の条件として、工場が予想を超える利益を計上した場合は補助金の返納を求める規定を組み込んでいることから、業績低迷で設備投資圧縮が迫られる現在のTSMCには工場建設開始は難しい判断となりそうです。

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ライター

明松 真一郎

アイザワ証券 市場情報部

明松 真一郎

1990年平岡証券(現アイザワ証券)に入社。加古川支店でのリテール営業を務めた後、ディーリング部、営業本部、生駒支店でのバックアップ部門などを経験。2005年に証券アナリスト資格取得したことを機に、市場情報部(当時投資リサーチセンター)に異動。アセアン株を中心としたアジア株の調査、分析を行なっている。

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