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資産運用

かぶかはふしぎでうごいてる??? 第5回 株価と会社をつなぐもの 続編「収益性」

2022.03.20 (日)

アイザワ証券 投資顧問部

吉田 大路

かぶかはふしぎでうごいてる??? 第5回 株価と会社をつなぐもの 続編「収益性」

第4回では企業を評価する視点の代表的なものとして「成長性」「収益性」「安定性」などがあること。そのうち「成長性」について補足説明をしました。今回は続編として「収益性」について説明します。

利益率は大別して2種類あります

売上高に対する利益率

1,000円の商品の仕入れ値が600円であれば、400円の利益が生じます。この場合の利益率は40%になります。しかし、商売をするには家賃や人件費、光熱費などの費用が生じます。売上高を伸ばそうとすれば宣伝を行わねばなりません。これらを控除すると利益は400円以下になってしまいます。製造業の場合には工場や設備の製作費もかかります。そのような費用をまとめた結果が企業の発表する決算の利益になります。

この利益は会社の開示資料(短信や有価証券報告書、決算説明資料など)に記載されていますし、手っ取り早い方法では会社四季報などを利用する方法もあります。代表的な利益率である営業利益率は次の式で計算します。

営業利益率(%) = 営業利益 ÷ 売上高 × 100

利益率は数字が大きい方が収益性の高い企業と言えます。ただ、利益率が大きく変動する会社の場合には一時点の利益率で収益力を判断すると会社を過大・過少評価してしまいます。出来る限り過去からの利益率の推移を確認して、その会社の特徴を確認することを推奨します。

さらに掘り下げるなら、利益率が変化した時の企業の開示資料を見て、なぜ利益率が変化したのかを確認すると企業への理解が更に深まります。

資本に対する利益率

この利益率は株主の投下した資金(資本)に対して、企業がどれだけの利益を上げているかを表す指標です。通常ROEReturn On Equity、自己資本利益率)と呼ばれるものです。次の式で計算します。

ROE(%) = 当期純利益 ÷ 自己資本 × 100

株主から見れば少ない資本で多くの利益を上げてくれた方が望ましく、多くの資本を使用して多くの利益を上げてもそれは当たり前じゃないか、となるわけです。また、株主はそれなりのリスクをとって投資を行っているのだから、その投資(資本)に対してはそれなりの利益を上げてもらわないと困るとも言えます。

ROEを高めるには既存の商売を頑張って利益を増やし続けることが一番美しい方法なのですが、ハードル的にかなり高いです。経営判断で行える方法としては次の2点が挙げられます。

  1. 資金を投入して利益を増やす(分子を増やす)→投資やM&Aなどを行うことで業容拡大させる方法
  2. 自己資本を減らす(分母を減らす)→配当を増やすか自社株買いの実施など、資本を社外流出させる方法

1は企業の作戦結果に依存(M&Aした会社の良否など)しますが、2は確実な成果が生じるため株価的には好感されやすい方法です。

収益性を評価するポイント

  1. 継続性
    最も重要なポイントです。その利益率が継続的なのかを検討することは大切です。特に、業績が循環する企業では業績のピークの所で利益率が高水準になることが多いです。これを好評価することは危険ですね。利益率が少しずつ常に向上している企業は安心感があります。
  2. 業界特性
    ROEを評価するときには注意が必要です。基本的にサービス業に多い労働集約型企業では事業を行う資源が従業員であるため、この資源(従業員)を増加するための資金は必要ありません。そのため、資本が大きくならず(分母が小さい)ROEは高くなりがちです。一方、製造業の場合は事業を行うためには工場、製造設備が必要になります。それを揃えるために資金が必要です。そのため、資本が大きくなりがちで(分母が大きい)ROEは低くなりがちです。業界ごとの特性を考慮してROEの比較を行うと企業への理解が深まります。
  3. 参入障壁
    前回にも少し触れたことの繰り返しになります。売上高に対して利益の多いビジネスは他社からの参入が懸念されます。少ない資本で利益が獲得できるビジネスは新規参入業者が増加することが懸念されます。営業利益率の高い・ROEの高いビジネスを行っている企業を見る場合には参入障壁があるか、もしくは、他社からの参入を振り切って成長していける何かをもっているかを確認することが大切です。
  4. 企業会計について
    売上に対する利益率の所では「営業利益率」を尺度として紹介しましたが、利益水準の高い関連会社を持っている企業では、その利益が反映される経常利益率を利用する方が実態を反映します。企業によってどの利益を使うべきかを決めることは、その企業のビジネスを知ることがベースになります。また、企業間の横比較とその企業の過去からの推移を両方行うと勘所が見えてきます。なかなかハードルの高いことですが、スポーツなどと同じで、練習を続けると次第に頭が勝手に反応するようになってきます。そして、出来るようになると楽しくなってくるのはスポーツなどと同じかもしれません。

少し長くなってしまったので「安定性」については次回で取り上げます。

投資用語解説 第2回 GARP投資

株式市場には様々な投資手法が溢れています。本編の第3回で投資指標について書いた時にも「絶対的な投資指標はない・・・」と記しましたが、投資手法についても同様だと考えています。その時代ごとに脚光を浴びる投資手法が現れるのですが、長期間に渡って効果を発揮し続けるものを見たことがありません。どこかでその素晴らしい投資手法の効果は減衰してしまいます。具体的な事例を挙げてみたいのですが、これは職業倫理上できません。申し訳ありません。

ただし、これまでも有効であり、今後も効果が継続するだろう投資手法が一つあります。それが「GARP投資」です。”Growth at Reasonable Price”の略で「成長企業の株式を安い値段で買おう」としたものです。ごもっともなのですが、2つの大きなハードルがあります。

まず、成長企業はどの企業なのか?そうなのです、現在成長している企業を探すのはたやすいですが、今後成長し続ける企業を探すのは大変です。勿論、株価は将来の成長を見て動きます。

次に、成長企業であれば株価は上昇しているはず。そうなのです、現在まで成長している企業でも将来のことは別です。株価の安い成長企業があれば、そこには何かのリスクが存在するのではと勘繰ってみる姿勢は大切だと思います。

では、使い物にならないかといえば、半分はその通りなのですが、半分はそうでもありません。業績の良い企業、成長商材を持った企業、時流に乗っている企業・・・などは株式市場で話題になります。成長企業と呼んでも良い企業もあるでしょう。ちょっと落ち着いてその企業の長期的な株価推移を見てください。そして、投資指標を見てください。その結果、“Reasonable Price”だと判断出来れば「GARP投資」になります。

そろそろネタがばれつつありますね。「GARP投資」は投資手法というよりも「投資の心得」的なものなのです。これは20年前にアマゾン株を買っていたらといったような成長企業投資とは少し異なりなります。もう少し保守的な投資姿勢になります。

ただ、「GARP投資」に近い投資を比較的困難でなく出来る方法があります。それが、マーケット全体が軟調となり、全面安の商状を示したときに成長企業に投資することです。勿論、前述した2つのハードルは残るのですが、通常時よりはGARPな投資が出来る可能性が高いと思います。

執筆後記

5回目は企業評価の続編を記載しました。思ったよりも文章が長くなったので「安定性」については次回とさせていただきます。くどいかなと不安なのですが、これでもかなりの部分を端折って説明させてもらっています。理屈っぽい筆者的にはこれほど単純化してよいのだろうか?との葛藤の下でやっております。

前回に導入したテコ入れ策(投資用語解説)はいかがでしょうか。出来るだけ教科書的にならないように、現実に則して記述しているつもりです。しかし、読まれる方によっては結論を避けて逃げているように感じられるかもしれません。ここは筆者の投資に対する基本感である「素晴らしいアレが、アレであることって運の範疇を超えないよね」に起因しています。かっこ良くいえば「投資に絶対はない」のようなことです。これに懲りずに、また読んでいただければ励みになります。おおよそ月に一度の発行スケジュールなので、次回もよろしくお願いします。

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ライター

吉田 大路

アイザワ証券 投資顧問部

吉田 大路

2015年アイザワ証券入社。現在は投資顧問部運用課に所属。当社入社以前は証券系投資信託、生保系投資顧問、信託銀行などで約30年間、資産運用業務を行ってきた。基本的にブログやSNSはやらないので、今回の業務に伴う書き込みが初めての体験。

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