ゼロから学べるアイザワ投資大学

会員登録(無料)

記事検索

アジア

アイザワ ほっと マーケットアジア Asia Market Strategy 2021年11月

2021.11.29 (月)

アイザワ証券 市場情報部

明松 真一郎

アイザワ ほっと マーケットアジア Asia Market Strategy 2021年11月

コロナ感染者はピーク時より減少ながら新たな課題も

日本や先進国各国と同様に、アジア新興国においても、新型コロナ感染者数がピーク時に比べて大幅に減少してきました。これに伴って、工場の操業停止や地域間の移動の禁止など、これまで課していた多くの制限を緩和する動きが出てきています。経済正常化に向かいつつあるとみてよいでしょう。ただ、多くの国で改善の兆しを見せ始めているとはいえ、国によって状況は異なります。直近の課題、いくつかの国別の状況などを確認したいと思います。

改善の兆しをみせているアジア新興国にとって直近の大問題が、米国のテーパリングと物価上昇です。まず米国のテーパリングですが、米国はすぐに利上げは行わない、との方針を示しているものの、全世界的な金融緩和による「カネ余り」状況から緩和縮小に転換する時期が近づいてきました。以前、2013年ころに米国がそれまでの金融方針を転換してテーパリングを開始したときには、経常赤字国を中心に大幅な通貨安となりました。今回も2013年と同じ状況になるとは考えにくい状況ですが、心理的な面も含めて何らかの影響は出てきそうです。しばらくは、経済正常化への期待の高まりと「カネ余り」修正による悪影響の綱引きが続きそうです。

また、もうひとつの問題点が物価の上昇です。直近、米国では10月のCPI上昇率が前年同月比+6.2%と1990年11月以来の高い伸びとなりました。アジア新興国各国もほぼ同じ状況で、直近10月のCPIは、タイが+2.38%、インドネシアが+1.6%、ベトナムが+1.77%、フィリピンが+4.6%と、まだ水準的に高くはないものの、徐々に物価高の兆しが出始めています。また、中国ではCPIは1.5%とそんなに高くありませんが、PPI(生産者物価指数)が13.5%と1995年以来の水準まで上昇しました。世界的な資源高、天候不順、企業活動・個人消費への制限、サプライチェーンや物流の混乱などが影響していると思われます。なお、もともと新興国経済はインフレに対する耐性が弱い傾向があり、今の水準でも要警戒水準にあるといえます。直近は、韓国とシンガポールが利上げを行なったほか、2022年前半にはフィリピンが利上げに踏み切るのでは、との観測が高まっています。国内経済が回復途上で、需要が低迷しているなかでのインフレ進行は、悪い物価上昇といえます。インフレの動向は警戒しながら見守っておく必要がありそうです。

今後の本格回復が期待されるベトナムと回復遅れ気味のタイ

アジア新興国のなかで、今後の本格回復を期待できるのがベトナムです。新型コロナが蔓延していた当初にはベトナムは封じ込めに成功している国として世界的に評価されていましたが、2021年年初あたりからは感染者が拡大し、対応に追われました。直近発表された2021年7~9月期実質GDP成長率が前年同期比6.17%減と落ち込みがひどかったのは、工場の停止や外出制限など徹底的なウイルス排除政策をとったことの弊害がはっきりと出ているといえます。

10月1日からは、外出禁止などいくつかの制限が緩和されることになりました。その後、コロナ禍の再燃によって一部方針の変更も見られたものの、厳格な対応によって感染者増を抑え込むと推測されます。11月22~25日の日程で、ベトナムのチン首相が来日、岸田首相と会談しています。岸田氏が首相に就任してから初めての首脳級の賓客です。さらなる信頼関係の構築によって、今後、新たな収益機会拡充につながると予想されます。

その反面、まだ厳しいのがタイです。2021年後半にはワクチンの接種が進んで感染拡大のリスクが下がっていることで、旅行者の受け入れが予定されていましたが、11月1日に後ろ倒しされることになりました。GDPにおける旅行産業の比重が高いタイ経済の回復ペースは、マレーシアやベトナムに比べて緩やかになると思われます。また、直近の資源高は、資源の少ないタイにとって物価高騰要因となっており、回復遅れにつながりそうです。

今月の参考銘柄(中国以外)

CMC技術(ベトナム:CMG )

ベトナム大手IT会社で、パソコンの生産販売、システム構築、ソフトウェア開発などを行なっている。直近は他国と同様にベトナムでもテレワーク、在宅授業など向けにIT機器販売が増加しており、コロナ長期化が同社にとって追い風となっている。ベトナムで2021年1~2月に実施された第13回共産党大会では、今後のデジタル技術強化の方針が示された。今後の同社へのIT需要押し上げにつながると予想される。

マッサングループ(ベトナム:MSN)

ベトナムの大手コングロマリットで、子会社を通じて食品、飲料、食肉加工、金融などの事業を手掛けている。醤油、インスタントコーヒー、インスタント麺など主力商品において高い市場シェアを持っている。2019年末にビングループの小売事業を買収したことを機に小売事業も強化している。

ホアファットグループ(ベトナム:HPG)

ベトナム最大手の鉄鋼会社で、鋼管、鋼板など鉄鋼関連製品を幅広く製造販売している。近年は中部ズンクアット経済区に大型鉄鋼コンプレックスを建設、輸入に頼らない自社製造の比重を高めている。2022年1月から「RCEP」が発効することになったことによって、今後同社にとって中長期的な需要押し上げにつながると予想される。

ご留意事項

金融商品等の取引に関するリスクおよび留意点等

お客様にご負担いただく手数料について

免責事項

本資料は証券投資の参考となる情報の提供を目的としたものです。投資に関する最終決定は、お客様ご自身による判断でお決めください。本資料は企業取材等に基づき作成していますが、その正確性・完全性を全面的に保証するものではありません。結論は作成時点での執筆者による予測・判断の集約であり、その後の状況変化に応じて予告なく変更することがあります。このレポートの権利は弊社に帰属しており、いかなる目的であれ、無断で複製または転送等を行わないようにお願いいたします。

ライター

明松 真一郎

アイザワ証券 市場情報部

明松 真一郎

1990年平岡証券(現アイザワ証券)に入社。加古川支店でのリテール営業を務めた後、ディーリング部、営業本部、生駒支店でのバックアップ部門などを経験。2005年に証券アナリスト資格取得したことを機に、市場情報部(当時投資リサーチセンター)に異動。アセアン株を中心としたアジア株の調査、分析を行なっている。

合わせて読みたい

このカテゴリの他の記事

アジア アジア株週間トピックス 2023年10月16日号

アジア株週間トピックス 2023年10月16日号

2023.10.16 (月)

アジア アジア株式市場の見通し 2022年10月

アジア株式市場の見通し 2022年10月

2022.10.03 (月)

アジア アイザワ ほっと マーケットアジア Asia Market Strategy 2022年6月

アイザワ ほっと マーケットアジア Asia Market Strategy 2022年6月

2022.06.22 (水)

アジア アジア株式市場の見通し 2021年10月

アジア株式市場の見通し 2021年10月

2021.10.04 (月)

人気記事

アイザワ証券公式SNSアカウント