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Aizawa Market Report 生成AIの進化とサイバーセキュリティへの影響

2026.07.08 (水)

アイザワ証券 事業推進部

情報課

Aizawa Market Report 生成AIの進化とサイバーセキュリティへの影響

生成AIの進化とサイバーセキュリティへの影響

生成AIの急速な進化と大規模言語モデル(LLM)の高度化に伴い、サイバーセキュリティへの影響が波紋を呼んでいる。米アンソロピック社(未上場)が2026年4月7日に発表した高性能汎用AIモデル「クロード・ミュトス」(以下、ミュトス)は、ソフトウェアの脆弱性(セキュリティ上の弱点)を発見する能力が極めて高く、サイバー攻撃に関する一連のプロセスを自律的に遂行できることから、その能力が悪用されないよう一般公開が見送られた。同社は同日に「Project Glasswing」と呼ばれるサイバー防衛の枠組を立ち上げ、一部の企業・組織に限定して「ミュトス」のアクセス権を付与し、脆弱性の修正を促すことでシステムの安定性とサイバー攻撃に対する防御の強化を図っている(下参照)。

生成AI企業が主導する主なサイバー防衛の枠組

Project Glasswing

<概要>
アンソロピック社が主導するサイバー防衛の枠組。2026年4月7日に発表。同社の高性能AIである「クロード・ミュトス」を参画する企業に提供することで、重要なソフトウェア・インフラの中にある未知の脆弱性(ゼロデイ)を自律的に発見し、修正を促すことでシステムの安定性とサイバー攻撃に対する防御の強化を図る。

<主な参画企業>
発表当初はアンソロピック、アマゾン・ウェブ・サービス、アップル、ブロードコム、シスコシステムズ、クラウドストライク・ホールディングス、グーグル、JPモルガン・チェース、リナックス財団、マイクロソフト、エヌビディア、パロアルト・ネットワークスの12社。その後200社・組織以上に拡大。

Daybreak サイバー・パートナー・プログラム

<概要>
オープンAI社が主導するサイバー防衛の枠組。2026年5月11日に発表。同社の高性能AI「GPT-5.5」と「Codex Security」を企業のサイバー防衛に導入し、コードとシステム全体で脆弱性の特定、修正に必要なパッチを生成、検証を行う。

<主な参画企業>
アクセンチュア、アカマイ・テクノロジーズ、チェックポイント、シスコシステムズ、クラウドフレア、クラウドストライク・ホールディングス、ダークトレース、EY、フォーティネット、IBM、KPMG、オクタ、パランティア・テクノロジーズ、パロアルト・ネットワークス、プルーフポイント、PwC、ソフトバンク、トレンドAI、ゼットスケーラーなど30社超。

※2026年6月末時点 (出所:各種報道よりアイザワ証券作成)

また、米オープンAI(未上場)も2026年5月11日に独自のサイバー防衛の枠組「Daybreakサイバー・パートナー・プログラム」を発表。自社の高性能汎用AIモデル「GPT-5.5」にコーディング・セキュリティ特化の追加機能「Codex Security」を組み合わせることで、参画企業が運用するソフトウェアの脆弱性特定からパッチの生成、検証まで一連のプロセスを支援し、生成AIによるサイバー攻撃の脅威増大に対処する方針。

今のところ、「ミュトス」へのアクセスは厳しく制限されているものの、2026年中に他の新興企業から「ミュトス」と同等な性能を持つAIモデルが複数登場するとの見方もあり、国と地域、企業をまたがって多種多様な先端AIの悪用リスクを封じ込むのは非常に困難な情勢だ。既存のサイバーセキュリティだけでは高度化するサイバー攻撃に対処しきれない以上、各国の政府や金融機関、一般企業は生成AIに対応した防御策を取らざるをえず、今後サイバーセキュリティ対策の強化に向けて予算を増額することが予想される。その恩恵を受ける主な企業として、クラウドストライク・ホールディングス(米国:CRWD)とパロアルト・ネットワークス(米国:PANW)などが挙げられ、両社とも上記2つのサイバー防衛の枠組に参画して生成AI対応が進んでいるほか、次世代ファイアウォールやエンドポイント、クラウドセキュリティ、アイデンティティ(ID)保護など多層防御を提供する統合プラットフォームとして有用性が高い。

また、セキュリティ以外の分野でも、脆弱性の検知・修正をきっかけとしたシステムインテグレーター(SIer)の受注拡大、ソフトウェアの開発効率や安定性の向上、エージェント型AIの普及加速につながることが期待できよう。「ミュトス」の登場は、既存のセキュリティ環境に警鐘を鳴らしたと同時に、過去の2000年問題と同様に官民を巻き込んだ事前対応を通じて業界の中⾧期的な発展を促す可能性もあると考える。

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情報課

アイザワ証券 事業推進部

情報課

2026年4月より市場情報部から事業推進部情報課に組織変更。国内、欧米などアイザワ証券が取り扱う市場の政治経済動向や上場企業を調査・分析し、レポートやセミナー、メディアを通じてお客さまに情報提供を行う。

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