
コリアインサイト 韓国市場で最も株主を優先する企業:メリッツ金融グループの価値創造
2025.05.31 (土)




以前こちらの記事(コリアインサイト コリアディスカウントの現状)で紹介したように、韓国には「コリアディスカウント」による慢性的な株式市場の低評価という問題があります。その核心は、「オーナー」と呼ばれる大株主と少数株主の利益相反です。政府はこの問題に題する解決策として「バリューアップ・プログラム」という政策を打ち出しました。
この「バリューアップ・プログラム」とは別に、韓国では株主価値向上を自主的に実施した経営者がいます。それが「大株主の1株も少数株主の1株も同じ価値がある」という発言をしたメリッツ金融グループ会長の趙正鎬(チョ・ジョンホ)氏です。
メリッツ金融持株会社の趙正鎬会長
メリッツ金融グループ会長の趙正鎬(チョ・ジョンホ)氏は、韓進(ハンジン)グループのオーナーであった趙重勳(チョ・ジュンフン)前会長の四男です。韓進グループは大韓航空、韓進宅配、旧韓進海運、旧韓進重工業など、主に輸送業とその関連事業を展開してきました。韓進グループにおいて金融事業は中核ではありませんでしたが、そのような中、 2002年に趙正鎬氏は韓進グループから韓進投資証券と東洋火災の経営権を取得しました。
20年余りの歳月を経て、趙正鎬氏が取得した企業は高い企業価値を持つ企業へと成長しました。次男が引き継いだ韓進重工業と三男が引き継いだ韓進海運は倒産しましたが、長男が引き継いだ大韓航空の時価総額は2025年5月時点でおよそ8兆1,400億ウォンであり、メリッツ金融グループの時価総額はおよそ21兆2,800億ウォンです。
メリッツ金融グループの経営
メリッツ金融グループは、メリッツ火災、メリッツ証券、メリッツキャピタル、メリッツ資産運用から構成されています。この中で主な事業はメリッツ火災とメリッツ証券です。メリッツ火災は、韓国内で付加価値の高い長期契約保険を中心に事業を展開しており、メリッツ証券はセールス&トレーディング(S&T)部門で債券取引を、投資銀行(IB)部門では国内外の不動産事業を中心に運営されています。

出所: 韓国金融監督院データよりアイザワ証券作成
注 : 2024年12月決算
メリッツ金融グループは、韓国型の家族経営ではなく米国型の株主中心主義を積極的に導入し、相続に関しても無条件に会社を引き継がせることは、自身の子供たちにも企業の将来にも良くないと判断し、2019年に「子息への継承は放棄する。それにより非効率な経営を解消する」と発表しました。
継承の放棄を公式化した後、上場会社であるメリッツ火災とメリッツ証券を完全子会社化し、ガバナンス構造の改革を進めました。2022年には、既に上場していたメリッツ火災とメリッツ証券を上場廃止としメリッツ金融グループへの統合を実施しました。同時に、株主中心主義を本格的にスタートしました。
※アイザワ証券ではメリッツ金融グループの取扱いはございません。
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