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経営者向け簡単解説シリーズ 不動産オーナー必見、不動産M&Aを簡単解説!

2023.02.02 (木)

アイザワ証券 ソリューション部

豊福 哲矢

経営者向け簡単解説シリーズ 不動産オーナー必見、不動産M&Aを簡単解説!

M&Aによる不動産売却、どのようなメリットがある?

不動産M&Aとは、会社の保有する不動産の獲得を主目的としたM&A取引のことを言います。単なる不動産の譲渡ではなく、不動産を保有する会社の“株式”を売買することによって、目的とする不動産を買い手に移転させます。不動産M&Aにより不動産を保有する会社の株主は変わるものの、不動産の保有者はその会社から変わりません。そのため、通常の不動産取引で必要となる不動産取得税や登録免許税といった税金が課されないなどのメリットがあります。

今回はそんな不動産M&Aのメリットと注意点について簡単に解説したいと思います。

メリット①:売主は高い節税効果が得られる可能性がある

通常の不動産取引では売却益に対して法人税等で約30%課税されます。さらにオーナー経営者に株主還元すれば、オーナー経営者に対し、配当所得として総合課税が適用されます。累進課税により税額は計算されますが、上記の法人税を控除した残額に、例えば、最高税率で約55%の所得税等が課されてしまうと、株主の手取りは大幅に減少してしまいます。

一方、不動産M&Aでは不動産を所有する法人の株式を売却したとしても、当該法人が不動産の法的な所有者であり続けるという点は変わらないため、基本的には当該不動産の含み損益は実現しません。そして、その目的とする不動産をオーナー経営者が保有する株式という形で売却します。あくまで譲渡の対象は“株式”のため、株式譲渡益に対して譲渡所得として分離課税の適用を受けますが、譲渡所得に対する税率は約20%です。

そのため、単純な不動産取引よりも高い節税効果が望めると言われています。

メリット②:売主は第三者承継によるメリットも

オーナー経営者ご自身がご高齢で、親族・従業員に後継者がいなければ廃業しよう、と考えるケースは数多くあります。

不動産M&Aでは法人が所有する不動産の取得を目的としながら、その法人の経営も買い手に引き継いでもらうことができるため、オーナー経営者の後継者問題も一挙に解決することができます。外部企業を承継先として経営を引き継いでもらうことができれば、廃業は回避できます。そうすれば、設備や在庫の処分費等の廃業コストの削減にもなりますし、従業員の雇用を守ることにもつながります。さらに、買い手に経営を引き継いでもらうことで、資力が乏しくて安定化できなかった経営を買い手の資力で解決することができるようなケースもあります。

メリット③: 買主は各種コストを抑えて取得できる可能性がある

一般的に不動産を購入すると、その取得に対して不動産取得税や所有権の移転登記のための登録免許税、印紙税等がかかりますが、不動産M&Aにおいては対象となる不動産は売り手企業に属したままになりますので、これらの税金はかかりません。また、売主の節税効果が高ければ、売主の手取額が増加する分、目的とする不動産に対しての価格交渉力が上がりますので、魅力的な不動産を通常よりも割安な価格で取得できる可能性もあります。

不動産M&Aで注意しなくてはならない点とは?

高い節税効果や多くのメリットを望める不動産M&Aですが、M&Aで売却することによるデメリットもあります。

不動産M&Aでは基本的に不動産の取得を目的としますが、目的とする不動産以外の資産や負債も引き継ぐことになるため、必要な手間暇が売り手と買い手の双方で増えてしまいます。そのため、通常の不動産取引よりも売却までに時間が必要になるといわれており、早急に売却を考えている場合には大きなデメリットとなってしまう可能性があります。

また、会社を売却するという情報自体に高い守秘性が求められるため、通常の不動産取引のように不動産情報をオープンにするのではなく、クローズドで話を進めることが一般的です。そのため通常より買い手を探すのが難しいという点があげられます。したがって、実際に不動産M&Aでの売却を検討する場合には、買い手候補の探索などを専門とするM&Aのアドバイザーを見つける必要があります。

買主特有の注意点は売主も把握しておく

買主は不動産M&Aにより譲渡対象企業そのものを取得することで、譲渡対象企業が持つ「ノウハウ」「人材」「顧客」「取引先」等、すべてのリソースを獲得することができます。

一方、デューデリジェンスなどを徹底しないと簿外債務などの負の資産まで引き継ぐ可能性があるので、買い手側はその点に注意が必要です。また、買い手が連結納税制度を導入している場合には、不動産の含み益に対して課税がされます。さらに将来、当該不動産を売却した場合には引き継いだ簿価との差額が課税対象額になるため、買い手にデメリットが生じるということには売り手としても考慮しておくべきでしょう。

不動産M&Aを活用した売却で創業者利潤の最大化を目指そう!

不動産M&Aは通常の不動産取引と異なり、売り手・買い手の双方にとって大きな節税効果を発揮する可能性があります。また、M&Aによる第三者承継で後継者問題を解決したり、自社にはないリソースを手っ取り早く取得することが可能です。

一方で、買い手は通常の不動産取引とは異なることから、譲渡対象企業の簿外債務まで引き受けてしまうリスクもありますので、買い手はデューデリジェンスを慎重に行い、売り手は適時適切な情報開示が必要になってきます。

このような細かな注意点やリスクは不動産M&Aに限らず、通常のM&Aにおいても多々あります。リスクを抑えるためには個人で行わず、専門家に相談することです。不動産M&Aを行う場合には「不動産」と「M&A」に精通したアドバイザーに必ず相談するようにしたほうがよいでしょう。

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ライター

豊福 哲矢

アイザワ証券 ソリューション部

豊福 哲矢

2015年に日本アジア証券株式会社(現アイザワ証券株式会社)に入社後、営業経験を経て、公開引受部門に異動。上場準備支援業務等に従事し、アイザワ証券株式会社との合併後は、IPO、M&A、ストックオプション等といった企業の事業戦略サポートに取り組む。

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