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投資のコンシェルジュ 第3回 “日経平均5万円”へ!?世界に並べ、日本株の飛躍的上昇の可能性

2022.01.24 (月)

アイザワ証券 金融商品部

河西 幸弘

投資のコンシェルジュ 第3回 “日経平均5万円”へ!?世界に並べ、日本株の飛躍的上昇の可能性

1回では、日本のインフレ(物価上昇)に起因する円安、第2回では、インフレの時期に株高が起こるメカニズム、について、お伝えしています。第3回では、いよいよ、日本の株価はいくらまで上がる余地があるのか、へ迫ります。

復習:日本のインフレは始まっている

202112月の米国消費者物価指数(CPI1/12発表)は前年同月比7.0%と、116.8%から拡大、約40年ぶりの高水準を記録。OECD加盟38か国の2111月は同+5.8%、こちらも約25年ぶり。

日本でも、本稿・第2回の通り、東京都区部では、2112月は同+0.5%。ガソリンなどエネルギー+16.9%、回復途上の宿泊費+44%など幅広い分野で上昇顕著の一方で、大手電話会社の携帯電話・通信料が-53.6%、寄与度-1.13ポイントと物価押し下げ要因に。それがなければ(0.5%+1.13)=1.63%。1986年から1990年「平成バブル」末期5年の年平均と同水準まで上昇しています。

「インフレ」は、企業にとり、製品・サービスの値段が上がり、個数が前年と同じでも売上・利益の伸ばし易い。加えて、第1回の通り、(対ドルでの)円安です。同じ10ドルの輸出でも、1ドル=100円なら1,000円、115円なら1,150円と、これも利益が上がり易い。

「インフレ」と「円安」により、日本の企業利益(経常利益)は、2021年、そして、来期22年度と、連続して過去最高益を更新する見通しです。

日本は、なぜ、万年“割安”なのか?

確かに、日経平均・TOPIXは約30年ぶりの30,000/2000ポイントまでの回復をみせていますが、欧米各国の様に“過去最高益”に対して、“過去最高値”にはなりません。米国の株価指数、例えば、S&P500は、2021年に70回も過去最高値を更新しています。なぜ?

よく、日本は「割安」、米国は「割高」などで使われる高安のモノサシは、多くの場合「株価収益率(PER)」です。

PERは「何年先までの利益で株式へ投資されているか」を示し、「先々まで利益と成長が見通し易い」株価ほど高評価になります。米国「S&P500」は25倍と高評価、対する日本「日経平均」は16倍、「TOPIX」は15倍と相対的に低評価。これは、22114日現在の「一時的」なものでなく、近年は「恒常的」。すると、構造的な問題がありそうです。

 図32013年以降の各国・地域の代表的株価指数のPER推移をみると、日本は米国だけでなく欧州より概ね低位で推移。近年はアジア各国に追い付かれている状況です。

日本は、米国同様に政治・経済は安定し、成長性の違いはあれPERの差は非常に大きいと言えます。例えば、米国のS&P50025倍を日本・TOPIXEPS22年度予想EPS135ポイント)に掛けると3,375pと、現状より約70%も高い水準となります。

そうなると、「PER」は一つのモノサシではあっても、株価を決める決定的な数値ではない、という見方ができます。それでは、昨今の世界の株価の決定要因は何か?

今、世界の株価のモノサシは「利回り」≒「利益率」

世界には、現在、約10,000兆円(1京円)の運用資金があり、多くは各国及び企業の年金基金、銀行・証券・保険会社、そして投信会社など、「機関投資家」が運用する長期的な資金であり、様々な資産の上・下等の値動きの方向性(トレンド)を需給面で決定すると考えられます。株式市場へ絶大な影響力を持つ彼らが、近年、「投資のモノサシ」として重視しているのが様々な「利益率」。その代表が、「自己資本利益率」(Return On EquityROE)です。

「自己資本」は返済の義務がない会社自身の資金であり、別名「株主資本」と呼ばれ、概ね、株主の皆さんから集めた資金。これを事業に投じどれだけ「純利益」を稼ぐことができるのか、を示す指標であり、一般的に数値(%)が高いほど「稼ぐ力が強い」、と言えます。

〔ROEの例1〕
① 202X年、A社の自己資本は1億円、同年の純利益は1,000万円であった。
 ⇒ ROE = 1,000万円 ÷ 1億円 × 100 = 10(%)
② 202X年、Z社の自己資本は3億円、同年の純利益は1,500万円であった。
 ⇒ ROE = 1,500万円 ÷ 3億円 × 100 = 5(%)

「例1」では、自己資本はZ社が大きいものの、A社の方が少ない自己資本をうまく(効率よく)事業に使う(投下して)ことができている、と言えます。

それでは、どのように株価の決定要因になっているのか。

〔ROEの例2〕
③ 202X年、A社のROEは10%であり、1,000円の株価(=資本)に対し100円の利益。
  ⇒ 100円 ÷ 1,000円 × 100 = 10% 
④ 202X年、Z社のROEは5%であり、1,000円の株価(=資本)に対し50円の利益。
  ⇒ 50円 ÷ 1,000円 × 100 = 5%

「例2」では、利益率が高いA社と、同じく低いB社の株価を等しく1,000円としていますが、この場合、A社とB社、どちらへの投資が「お得」(割安)でしょうか?

答えは、「A社」ですね。1,000円の投資で年100円を稼いでもらえます。大多数の方がA社は「お得」とみて、A社へ投資が集まると株価は上昇。さて、(理論的に)いくらまで上昇すると思いますか?

〔ROEの例3〕
⑤ 翌年、ROE10%と利益率の高いA社の株価は投資家の人気化し、2,000円へ上昇。
  ⇒ 100円(利益変わらず)÷ 2,000円 × 100 = 5%
⑥ 翌年、ROE 5%と利益率の低いB社の株価は投資家から注目されず変化なし。
  ⇒ 50円(利益変わらず)÷ 1,000円 × 100 = 5%

「例3」の通り、A社の株価はB社と同等の利回り(「益利回り」と言います)になる水準まで上昇すると「お得」感が同等に。これは、2社の株価は利回りが同水準に近づく力が働き、その際、高「ROE」企業の株価は上昇し易いと言えます。
※PERは、説明の便宜上、同水準としています。

さて、結論へ向かう前に、もう一つ、株価の指標「一株当たり純資産価値(PBR)」をご紹介させてください。

〔PBRの例〕
⑦ 「ROEの例1」より、A社の自己資本は1億円、発行済株式数は10万株。
  ⇒1株当たりの純資産 = 1億(円) ÷ 10万(株) =1,000(円)
⑧ 「ROEの例1」より、Z社の自己資本は3億円、発行済株式数は30万株。
  ⇒1株当たりの純資産 = 3億(円) ÷ 30万(株)=1,000(円)

∴A社及びZ社のPBR = 株価1,000円 ÷ 1株当たりの純資産1,000円 = 1倍

便宜上、両者とも「PBR 1倍 = 1,000円 =1株当たり純資産」とします。

ROEでPBRが決まる、株価が決まる!?

A社、Z社のPBR 1倍を上記「一株当たりの純資産」として「ROEの例3」をみると、株価に対する「一株当たり利益」の割合が同等になるよう、A社に人気=投資が集まりPBR2倍へ変化するという、理論的な株価の動きが分かります。勿論、「例3」はフィクションですが、近年の「彼ら」の「ROE」志向の高まりにより、世界各国の株価はこの考え方により、概ね、実際の株価が決定づけられています。

6は、各国を代表する株価指数のPBRROEの関係を表しますが、概ね、2者に比例の関係がみられ有力な株価水準の決定要因と考えられます。従って、株価の解説でよく耳にするPERによる「割安・割高」の議論の意義は小さい、ことになります。

日本(TOPIX)は、ROE 8.5%、対するPBR1.2倍と掲載各国の中では低位。4カ国(豪・加・独・英)は、ROE 1213%と日本の5割増し、PBR2倍と日本の2倍。そして、米国は、ROE 19%、対するPBR 5倍と突出しています。「例3」の様に単純計算はできませんが、ROEが同水準の4カ国のPBRがやはり同水準であり、「利回りが同等に近づく裁定」の考え方を基にした一定の評価基準があるとみられます。

日本にROE 12%をもたらすか!?インフレと円安

そこで、日本も、ROE12%クラスとなれば、PBR2倍、日経平均で言うと、1倍≒22,500円×245,000円、が試算され、本稿のタイトルにある、「50,000円」に近づく可能性を説明できます。そして、「12%」への可能性は「インフレ」と「円安」という2つの要因が絡まり、高まりつつあると考えています。

「インフレ」は、一義的に、90年バブル崩壊以降の日本の構造的問題「デフレ」から脱却し、企業の製品・サービスの価格が、「デフレ(値下がり)」懸念から解き放たれ、企業の想定に近い販売及び“利益”を生み出し、利益率の向上が期待できます。さらに、企業が設備投資、人材雇用等に動き出せば、循環的な経済成長が戻ってきます。

「円安」は、「インフレ」で物価を表示する数字「通貨」の値が大きくなる=安くなる、ことでも発生し易くなります。それは、日本企業の海外現地法人のドルなど外貨建て売上・利益を円に直した時の金額が大きくなり、一方で、例えば、ドル建ての輸出品の値段を円安分割り引いても円建ての受取金額に変化がありませんから、価格競争力が高まり輸出数量が増加して、結果、利益が増幅することにもつながります。

日本のROEなど利益水準が相対的に低位となった主な要因は「デフレ」と「円高」であり、真逆の「インフレ」と「円安」により欧米並みの利益水準≒ROE 12%を達成すると、日経平均は89年最高値(38,905円)遥かに超える「50,000円」水準へ到達する可能性は十分にあると考えています。

歴史的な日本株上昇のメリットを効率よく生かすには「政策に売りなし」

日本株の大幅上昇の可能性について、第1回~第3回に渡りお伝えして参りました。22119日現在、日本株市場は、米国の「利上げ」観測の余波で軟調ですが、リーマンショックなど経済的ショックではないことから、企業業績の過去最高等を再び織り込む本格的な上昇局面入りが近い将来に始まるとみています。

その際、市場の上昇を着実に獲得する為の投資には、少額でも幅広い銘柄へ分散投資できる「投資信託」の活用をご提案します。

そして、日本株の有力な投資テーマは、菅前政権から岸田政権へ引き継がれた「政府のデジタル化推進」政策(2025年までに行政手続きの9割を電子化する等)と考え、関連する“情報通信産業”へ集中投資する投資信託ならば、国家予算が投資先企業の売上増≒株価への追い風となり、効率的に日本株の上昇を享受できるとみています。

相場の格言「政策に売りなし(※)」ですね。アイザワ証券のお店へ、是非、ご相談ください。

※国などの政策に逆行する投資は儲からない(政策に沿う投資が原則)、という意味。

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ライター

河西 幸弘

アイザワ証券 金融商品部

河西 幸弘

国内大手の証券・保険会社において、リテール、事業法人、機関投資家等への金融商品の営業を、大手運用会社では15年に渡りRM(リレーション・マネジメント)等を経験。その間、証券アナリスト(CMA)、日本FP協会(CFP)、1級FP技能士等の資格を取得。そして、2021年4月、アイザワ証券入社。金融商品部において投資信託や債券等のストラテジックな商品提案を推進する一方、難解な金融市場の「分かりやすい」解説に挑む。

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